« [書評]ハイペリオンの世界 | トップページ | サイレン »

2004年1月25日 (日)

日本国憲法って穴だらけ?

最近、少々の必要性があって日本国憲法を読み直した。そしたら、出るわ出るわ穴だらけ。一応近代国家で民主国家を標榜する経済大国日本の法体系の肝心かなめの憲法がこんなんでいいのかと怒りを覚えた。だから、似非サヨクにつけこまれるんだ。

さてさて、それでは、多少モザイク上になるが、その論拠を示す。

まず、日本の法全体についてのコメントから。

日本の民法は、フランス法体系を主に参考にして作られた。その他の法律も「ヨコタテ」の翻訳でほとんどできたといわれている。だいたいが、日本国憲法ですら「日本が二度とたちあげれない」ようにすることを目的に、アメリカ軍の将校が数週間の内にたたき台を作って国会で承認されて作られた。これはヘレン・ミアーズなどの著作から明らかだ。いずれにせよ、日本の法体系と憲法は借り物、与えられたものというのが実情であろう。
ここで私に疑問なのは、日本の法体系と憲法が国民にとって切実なものであるのか、体をはってでも守るべきものなのかかということだ?ローマの歴史、あるいはフランスの歴史、あるいはアメリカ独立宣言のように、安定した政体と法体系を作り上げるまでに、血で血をあらう争いを経験していない日本人に法律とはそれほど切実なものとの認識のないままに来ている。官僚によりただただ複雑にされてきてしまった、しかたないという程度の認識が実情であろう。国民の積極的な関わりがないままいろいろな法律があまりにおざなりに定められ、しかたなくしたがっているという状態であろう。

特に最初に書いたように憲法に関する穴がこれだけ多いまま放置されているということが納得できない。たとえば、憲法の穴の端的なものは、国家元首に関する定めがないことであろう。一体元首のきちんと定まっていないあるいは存在しない国なんて世界中に日本以外であるのだろうか?運用で内閣が全体として国家元首の地位を占めると言われて誰が納得するだろうか?

そもそも、国家元首の定義とはなにか? britannica.co.jpによると、国家元首は(引用すると法に触れるので要約すれば)、


元首とは、国際法上認められた国家を国外に代表する人物。条約の締結や戦争の開始、講和の締結などの行為を行う主権者である。日本国憲法では、必ずしも明らかにされていない。一般に諸外国では、天皇が国家元首として遇されている。

...のだそうだ。(文責は要約した私にある。)

一方、国際社会で認められている国家であれば必ず国家元首は存在している。アメリカの大統領、フランスだと首相がいる上に位置する大統領、ドイツの名誉職としての大統領、イギリスの女王、などなど。タイだと国王だと思う。そうか、北朝鮮の元首が誰かあきらかでないかもしれない。中国だとリポーさん(当時)かな?

条約の締結の機能などを持つ人物といえば、内閣総理大臣と内閣である。しかし、首相=Prime Ministerとは「第一のしもべ」という意味である。PresidentでなくPrime Minister、宰相が元首というのも言葉の定義からしてまちがっている。

ちなみに、元首であるということは、国際法上戦争の戦線布告まで認められる人物である。これは、かなり相当慎重に決定される仕組みが憲法にさだめられているべきである。合衆国憲法は、パワーバランスをとるために定められたといって過言でないと思う。条文のほとんどが選挙の仕組み、それから連邦と州の権限の調整にあてられているということの事情を受け止めるべきだ。ひるがえって、今の首相を選ぶシステムをいったい誰が信頼しているのだろうか?選挙のたびに、投票率のひくさにためいきがでるが、これは誰もが言うように政治に対する不信とあきらめの表現であろう。ちなみに、今の森首相(当時)のような人物が国家元首であるとすれば、国家として国民としてかなり恥ずかしい限りだと私は思う。

これらのことを考えると天皇条項を含む憲法改正の議論は以下の2点には少なくともこたえられなくてはならない。

・天皇制をどうするかという議論は必ず、「では誰が日本の国家元首なのか?」という問いに答えられなければならない。

・国家元首を天皇以外に建てるのなら、戦争をはじめるはじめないという決断と責任まで負える人物を選べる制度がなければならない。

個人的な感想をいえば、前回の戦争にけじめを打った人物が天皇であったことに私は誇りを覚える。これからもそれだけの「人物」に国家元首でありつづけていて欲しいと切に思う。また、皇太子の教育のシステムに大変期待したいと思う。

このような骨子の内容について、コメントしてくれた人がいた。その人は、「敗戦により日本は国家元首を剥奪された」といっていた。確かに、日本は国家元首を剥奪されたというべきなのかもしれない。

やはり、元にもどるべきなので、日本国憲法を読み直してみた。(これをホームページで公開されている河原一敏さんに深く感謝したい。帝国憲法までも公開されている。)

http://list.room.ne.jp/~lawtext/1946C.html

改めて今回憲法を読んでみて、気が付いたのが日本国憲法は、帝国憲法に基づいて天皇陛下が公布しているという事実。これまでの自分の権限を大幅に限定する憲法に玉璽を押すという昭和天皇の勇気に私は大変感銘を受ける。どこかの敗戦国のように最高権力者が自殺したり、リンチに会って刑死することをかんがえれば、はるかにましな権力の移譲の仕方であろう。

しかし、確かに剥奪されたのかもしれないが、内閣総理大臣を任命する権限をもち(逆にいえば現憲法上は天皇に任命されないと内閣総理大臣になれない)、憲法を含む法律と条約の公布をすることができる(逆にいえば内閣総理大臣にはこれらができない)ということは、形式的条件として天皇は対外的に国家元首として認められている権能を有すると考えられないだろうか?あるいは、内閣総理大臣ないし内閣に前述の国事が行えないならば、完全な国家元首でないと考えられないだろうか?

いずれにせよ、現行憲法では国家元首に関する既定が不十分であるのは明らかである。国家元首としての機能は、現憲法下において天皇と内閣総理大臣のトートロジーに陥っている気がする。

また、天皇制と現行憲法についてもいくつか考えさせられた。ある人の意見では、「現行憲法が天皇がいなければならないとは定めていないだろう」という。しかし、これは根本をあやまった意見であろう。

先ほども書いたように現憲法はもともと天皇が公布しその権威を与えている。憲法を全面改正して国民投票をとおったら「国民が制定した憲法」となり、かつきちんとした根拠が日本国憲法にあるといえるかもしれない。しかし、現実はつけやいばで作った若い憲法が戦後一度も改変されたことはない。つまり、現行憲法の権力の淵源というのは欽定憲法から受け継がれ、それから一歩もでていないと解すべきであろう。つまり、天皇の欽定憲法における地位がなければ現憲法自体根拠を失うということだ。

次に、「国民の総意」という問題がある。直接選挙で選ばれる大統領制をとっている国とは違い、日本の内閣総理大臣は果たして国民の総意を得て内閣総理大臣になっているのか疑問である。一体、支持率がヒトケタという国家元首が世界に存在するのか?(本当によく革命が起こらないものだと同じ国民ながら不思議に思う)形式上であれ、「国民の総意」により天皇の地位があると憲法に書いてあり、その憲法を原理とする法体系の中で国会から民法にかかわる会社運営、訴訟まで動いている。現行憲法とそれに基づく法律すべてを覆すだけの強い根拠がなければ「天皇がいらない」とはいえない。やはり、こういう意味でも国民投票で3分の2過半を獲得した上でなければ、憲法を改正(私にはそれは「正す」こととは思えないが...)して天皇制を廃止することは法理論上できないと解釈されるべきである。

さすがに私でも国民の3分の2過半が天皇制の廃止を主張するなら、廃止やむなしと考える。現在の日本を見ていてそれだけの人が廃止に傾くか疑問であるそもそも国民投票のやり方すらきちんとさだめていない欠陥だらけの憲法と法体系を放置している今の日本という国家は、なんという後進国であるか?

その他にも、すぐにも変更すべき項目はある。

・89条は、原則私学に補助金を公布することを禁じているが、補助金をもらわずに運営している学校が日本にいくつあるだろうか?

・前文で「われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とある憲法と9条が同時に存在する矛盾。

合衆国憲法の27にもおよぶ修正条項を読むだけでも、憲法とは国民が血をながしながらも勝ち取り、時代の要請にあわせて変更されていくべきものであることを実感する。

■参照リンク
「試訳憲法前文、ただし直訳風」 極東ブログ
距離、時間、そして統治と戦争 (HPO)
護憲=平和という勘違い by 柴田尚樹さん
フランスを羨ましいと思う訳 by Hiroetteさん
・「[書評]敗北を抱きしめて Embracing Defeat」 (HPO)

■追記
先日、「日本国憲法 七つの欠陥の七倍の欠陥」という本を読了した。9条を除いて、テクニカルな部分だけでもこれだけ問題があるとはしらなかった。ちょっと冗長な感じがするが、憲法の不備をよく理解したい方にはおすすめ。

作成 2001.3.10
改訂 15/12/31
修整 16/2/22、16/3/21、16/5/5(追記を加えた)

|

« [書評]ハイペリオンの世界 | トップページ | サイレン »

コメント

トラックバックで辿りつきました。試しに恐る恐る掲示した記事にトラックバックを付けて頂いて恐縮です。
「法治国家の良識ある国民であるには、憲法をちゃんと読んで大事にし、穴があれば塞がなければならない。」
とは思いつつも、自分自身全条をちゃんと読んだこともなく、この際反省して読まなければ...と思っております。


投稿: moto | 2004年1月29日 (木) 15時32分

motoさま、

コメントありがとうございます。ちょうど、自衛隊関係者の雑誌がたまたま手に入ってよんでおりました。なかなかおもしろいです。国際政治の研究とか、米国の戦術の分析など、自衛隊もかなりまじめにいろいろなことにとりくんでいるのがわかりました。

個人的には、ここまでやっているわけですし、憲法前文にもあるように「名誉ある地位」を築きたいと誰もがおもっているわけですから、自衛隊のあり方、合憲化を考えるべきだと私はおもうのですが?

ひでき

投稿: ひでき | 2004年1月30日 (金) 01時18分

興味深く読ませていただきましたが、ちょっとこれじゃあ説得力に欠けますねえ。

まず歴史認識が足りない。「日本国憲法ですら「日本が二度とたちあげれない」ようにすることを目的に、アメリカ軍の将校が数週間の内にたたき台を作って国会で承認されて作られた」ってのは、未だに存在する押し付け憲法論者の典型的な理屈。

これは、最初はGHQも日本の学者や政治家を集めて作らせていたわけです。でも、毎日新聞にリークされた憲法草案が、全く大日本帝国憲法と変わりないヘナチョコだったわけ。だから、こんなバカに任せてたらいつまで経ってもできやしないってことで、GHQが集めたメンバーで、各国憲法を参照して出来上がったってわけ。つまり、日本側が優秀であれば、「押し付け」られることなんかなかったってことよ。

次に、「日本の国家元首が誰なのか?」ってことですけど、天皇は「日本国の象徴」であって、元首じゃねえっすよ。第一条読んだ? あと、第三条、四条も読んだかな?? 「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」 つまり、天皇には国政に関する権限も責任もないんですよ。「内閣」が、その責任を負ってるわけよ。わかる?

だからぁ、天皇が「内閣総理大臣を任命する権限をもち、憲法を含む法律と条約の公布をすることができる」ってのはさあ、単なる「形式」なのよ。おかざり。第六十七条で国会の議決によって指名された内閣総理大臣を拒否することも、七十三条三項で内閣によって締結された条約を拒否することも、唯一の立法機関である国会が議決した法律を拒否することも、天皇陛下には出来ないのですよ。

あと、「法律」と「憲法」は全然別物だよ。憲法は「国民から統治権力への命令」で、法律は「統治権力から国民への命令」。統治権力は、国民からの命令である憲法の枠内で法律作れよってこと。

で、じゃあ元首は誰なのか? 内閣が責任を負っている以上、「内閣総理大臣」が元首だよ。学校で習わなかった?

次。「現憲法はもともと天皇が公布しその権威を与えている」ってねぇ、これも「形式」なわけよ。前の大日本帝国憲法が天皇主権で、現憲法が国民主権だから、形式的に主権を移行させるためにこういう形を取ったわけ。で、現憲法は国民主権だから、天皇の権威はもはや必要ないってわけ。

次に、「国民の総意」。確かに日本は直接選挙で総理大臣は選ばれてないよね。でも、民主主義には「間接民主主義」ってのもあるわけ。つまり、国民に選ばれた「国会議員」が、「総理大臣」を選ぶってシステム。民主主義って大統領制だけじゃないのよ。もちろん間接民主主義は完全じゃない。民意が正確に反映されるかどうかは問題ですよ。でもね、だからといって直接選挙にしたらうまくいくかどうかってのは別問題なわけ。学校で「衆愚政治」って習いませんでした?

あとさあ、「国民投票で3分の2を獲得しなければ憲法改正できない」みたいなこと書いてるけど、九十六条ちゃんと読みました? 正しいのは、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」で、かつ「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成」ってことなわけ。つまり、国会議員の三分の二が賛成してから、国民投票の総投票数の過半数の賛成ってこと。

で、これを見ても分かることだけど、天皇陛下にはやはり憲法改定する権限はないんです。

あなた、まだまだ勉強が足りないよ!

投稿: CONOHA | 2004年2月16日 (月) 11時55分

CONOHAさん、

ご指摘ありがとうございます。わかる範囲で修整してみました。勉強不足はご指摘のとおり、勉強不足の自分だとわかっていてもどうしても自分の考えを明らかにしておきたいと思い、本文をアップしております。また、自分の言行はかならず一致させるためにも、文章としてまとめておきたかった。

そもそも、国の政体や憲法、法というものは、人や社会が変化していくうえでどうしても変わっていかなければならないものです。それは、具体的な問題であり、日本国民一人一人が直面すべき課題であり、父祖が作ってきたものを受け継ぎ、発展させ、子孫へ残していくため、いま我々がどのように行動するかにかかっています。

建設的な議論、意見交換をさせていただければ、そこからまた新たな行動がはじまります。

投稿: ひでき | 2004年2月22日 (日) 10時45分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本国憲法って穴だらけ?:

» 憲法改正議論、前文にビジョンは必要か? [Blog for Japan]
昨年12月より自民党の内部で憲法改正プロジェクトチーム(杉浦正健座長)が立ち上がり、憲法改正に向けた議論が行われているという。自民党のウェブサイトを見てみると、... [続きを読む]

受信: 2004年2月15日 (日) 01時15分

» 世間の常識だから憲法を変えろという論理? [Blog for Japan]
衆院憲法調査会は11日、基本的人権小委員会を開き、思想・信教の自由について討議した。政教分離規定に関し、小野晋也氏(自民)が「行政や皇室行事への制約が大きい。世... [続きを読む]

受信: 2004年3月12日 (金) 01時14分

» 日本の国家元首って誰? [Days of SpeakEasy]
 突然ですが、皆さん知ってますか?日本の国家元首って誰なのか。  いきなりこんな [続きを読む]

受信: 2004年5月17日 (月) 17時23分

« [書評]ハイペリオンの世界 | トップページ | サイレン »