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2004年2月25日 (水)

公務員の罷免権

随分前に書いて最近こころぐにアップした拙文の「日本国憲法って穴だらけ」を先日少々見直した。見直していて改めて意識に登ったのだが、憲法9条だけでなく、私には私学への助成金を禁じたとしか解釈できない憲法89条など、実際と憲法が食い違っている事柄がいっぱいある。私が考える中で、も最も現実とかけはなれているのは、「公務員の選定罷免権」だ。以下、引用する。


第十五条【公務員の選定罷免権、公務員の性質、普通選挙と秘密投票の保障】

1  公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3  公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

ストレートにこれを読む限り、中央から地方まですべての公務員を、国民の権利として罷免することが出来るように思われる。さすがに、自信がなくなってネットをちょっと検索してみたが、同様の意見をsaitotaさんが書いていらっしゃるのを発見して、ちょっと胸をなでおろした。

しかし、現実は大きく違う。私が自分である政治家に直接聞いた発言である。

「役人をやめさせることは絶対にできない。総理大臣でも役人を辞めさせられない。この国の制度をひっくりかえさないかぎりできない。」

迷惑をかけるのは、いやなのでこの政治家についてはこれ以上かかない。しかし、こう思っているのはこの政治家だけでは決してないと思う。今考えてみるといったい彼らは憲法を読んだことあるのだろうか?

この下にどういう法律があるのかは知らないが、憲法は「国民から統治権力への命令」であって、法律の制限をいっさいうけるわけではない。実際に、憲法15条に基づく判決も100以上でているようだ(参照)。

政治家でも、総理大臣でも公務員を辞めさせられないというのは、サヨクのすきそうな「人の命は地球より思い」流のパラドックスであろう。人の命は絶対に地球より重くない。地球が一人のために犠牲になったとしたら、その一人すら生きてはいけない。形式であっても憲法のもとに官僚組織が構成されているからには、憲法は役人にとって地球も同じだ。そうそう、そもそも公務員は憲法を「尊重し擁護する義務を負ふ」と憲法99条に書いてある。

これは、やたらに乱用されるべき権利でないのはよくわかる。しかし、公務員にもうすこし身を慎む緊張感を持ってもらうには、一人でいいから実際にこの罷免権の適用事例をつくるべきではないか?そもそも、国に対して損害賠償を求めたとしてもあまり役人の懐はいたまないが、憲法15条に基づいて罷免を求める訴訟を起こした方がきくのではないだろうか?

...とか、書いていたら実際にそういう活動をしている方々がいるのを発見した。(参照

■参照リンク
流動性と役人の雇用。 @ 霞が関官僚日記
官僚幹部の政治登用 by gskayさん

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コメント

公務員については、やはり政治任用を広げること。ここから始まると思います。少なくとも上級の公務員については政治任用とすると(上級っていう言い方はよくないかも。政策立案をする公務員という意味ですな)。
例えば○○政党が政権をとって、××省の大臣にAさんがなったとしたら、Aさんが××省の政策立案する公務員を任命する。いわばブレーン集団を持ってきて、そこで政策を練る練る。○○政党が与党ではなくなったら、政策立案公務員は一切合切ずばっと失職。あたらしい政党の新しい大臣Bさんが、自らの政策担当公務員を任命すると。そして、政策立案を担当しない公務員の方々には、政策の執行に注力していただくと。
こうすれば、まず政治のリーダシップが強まると思います。最近の公務員制度改革のポイントであります。
(ひょっとすると、ひできさんは政治のリーダシップというよりは公務員の腐敗を追及しようとされているので、ちょいと論点がズレたかもしれません。おっしゃろうとしているニュアンスを取り違えていたらごめんなさい)

ま、しかし反論もあるわけです。

>政治家でも、総理大臣でも公務員を辞めさせられないというのは、サヨクのすきそうな「人の命は地球より思い」流のパラドックスであろう。

「サヨク」とかいう言葉を振りかざしてイージーに逃げるのではなしに、議論を見ていくと、例えばこういう意見があります。

http://www.kensyokurou.ne.jp/rensai/koumuinnseido/koumuinnseido1.htm

・公務員は全体の奉仕者(憲法15条)
・公務員の労働基本権(憲法28条)

を論拠にしているみたいですね。
こういうの議論を論理的に論破していく必要があると思います。
私はまだ論理的に論破する論拠がないので、ちょっち勉強し直そうと思います。久々に芦部や樋口を読み直すかな。

そうそう、あまり「サヨク」とかいって、そうやって自らの敵対勢力を類型化し単純化して論じていくのはまさに「サヨク」のやり方かと(笑)。
ま、じっくり論じて参りましょう。

今後とも期待しております。長文失礼いたしました。また参ります。

投稿: るとる | 2004年3月15日 (月) 21時20分

るとるさん、

いらっしゃいませ。さっそくのコメントありがとうございます。とりあえず「サヨク」という言葉を使ったのは、少々定義不足だったと感じております。それに、自分の立つ立場について、いろいろ書いているうちに逆にすこしゆれていることに気づきました。自分自身で自分の立場の問題は解決して、自信をもってお答えできるようにしたいと思います。

一方、「公務員は全体の奉仕者」というロジックは、研修でその理屈を習ったという友人から聞きました。でも、15条を読むと1項から4項まで並列で書いてあるように私には読めます。つまり、1項の選定と罷免の権利と2項の全体の奉仕者という概念は、並立している概念であって、お互いに干渉しあうようには私にはとても読めません。この辺も、るとるさんといっしょにぜひ論議をさせていただき、勉強させてください。

あ、いただいた大事なポイントを落とすところでしたが、政治任用を広げるという意見、大賛成です。

投稿: ひでき | 2004年3月15日 (月) 21時50分

公務員の罷免権
市長とかをリコールできるというのとは違うのですか?

投稿: BLUEPIXY | 2004年3月16日 (火) 14時25分

BLUEPIXYさん、

こんにちわ。すみません、不勉強ですね。いまいち確信がありませんが、地方自治体の首長のリコールというのも、15条第1項の適用の一部のようですよ。

ただいま勉強中なので、もうすこし時間をください。これから、

「日本国憲法 七つの欠陥の七倍の欠陥―だれでもわかるやさしい憲法のお話し」高久 泰文 (著)

という本を読む予定です。作者は、参議院法制局にながくいらした方だそうです。

投稿: ひでき | 2004年3月16日 (火) 22時32分

公務員の削減や政治主導のあり方を調べていたら、ここにたどり着きました。
この記事の公務員を辞めさせることはできないという話は決着がついたのですか?

投稿: おまーにゃ | 2005年10月18日 (火) 23時57分

おまーにゃさん、こんばんは、はじめまして、

↑↑の本も読了しましたが、納得していません。決着もしていません。なやんだのですが、はてなで質問してみました。

http://www.hatena.ne.jp/1129727065

投稿: ひでき | 2005年10月19日 (水) 22時06分

はてなの質問を読みました。

憲法というものは大枠しか決めてなく、実際に罷免にする場合等は個別に法を作らねばならないと言うことなのですね。
でも、「公務員をやめさせられない」というのは法の不備とも取れるのか気になりました。

投稿: おまーにゃ | 2005年10月30日 (日) 23時44分

おまーにゃさん、こんにちは、

質問にコメントをつけてくださった方がいらっしゃったので、つかれて憲法前文を和文と英文の両方で読んだりしております。なんというか、疑問は深まるばかりです。「そもそも、憲法ってなに?」って感じすらしてきております。

投稿: ひでき | 2005年10月31日 (月) 15時36分

公務員の選定罷免権とは何か検索していたところこちらに着きました。とても難しく私とは住む世界が違うなぁ。とか、頭の中身も違うんだろうなぁ。と思ってしまいました^^私は今育児をしながら進学に向けて高校の教科書を出してきて勉強しています。現代社会の公務員の選定罷免権についていきずまってしまいました。わかりやすくどのようなものか説明していただけるととてもうれしいです。よろしければお願い致します。

投稿: letyourheadgo | 2005年12月13日 (火) 01時28分

letyourheadgoさん、こんばんは、はじめまして、

>育児をしながら進学

すばらしいですね。先日、あるすばらしく巧なり名を遂げた方とお話していて、「やはり、一生学び続けるって大事だと最近あらためて実感しているんですよ」とおっしゃっていたのが、ものすごく印象に残りました。がんばってください。

>現代社会の公務員の選定罷免権

す、すみません。現在、「現代社会」という教科でどのような定義で教えられているのか、わかりません。↑でも書きましたが、はてなの質問に答えてくださった方々の解説がとても適切だと思われます。

http://www.hatena.ne.jp/1129727065

お力になれずすみません。

投稿: ひでき | 2005年12月14日 (水) 18時43分

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» [雑想][勉強の話] 日本国憲法15条 その2 [徒然なる毎日と、思考の彼方]
まあ、公務員の長は国民が選んでいるわけだから、その点では変ではない。そもそも憲法に書いてある権利を実現するためには、実際にそのことを実施するための法律がないといけないらしい。つまり、公務員の任免に関しては国家公務員法や地方公務員で規定されている。これらの法律を作る人たちを国民は選挙で選んでいるわけだから、「国民が公務員を任免している」ことになるようだ。 だからといって、国民が直接公務員を任免できる法律が作れないわけではないんじゃないかな。そんな法律があってもいい。一般的な大勢の公務員の任免権が直接国... [続きを読む]

受信: 2005年11月29日 (火) 18時48分

» 憲法について少し考えてみよう 15条 17条 [つらつらブログってみます]
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。 第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求... [続きを読む]

受信: 2006年2月26日 (日) 16時45分

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