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2004年4月10日 (土)

占領とレジスタンス

■それは妻のひとことからはじまった

昨日の朝、妻がテロが相次ぐイラクの様子を伝えるニュースを見ながらこう言った。

「やっぱり、日本人ってえらかったよね。同じアメリカに占領されてもテロ一つなかったんでしょう?」

妻の一言からいまのイラク情勢を考えると言うよりは、日本の戦後について考えてみた。

■なにが違うのか?

考えてみれば、日本軍は長野に松代大本営まで作って本土決戦を唱えていた訳だし、それこそ国土の地形から行けばテロやらゲリラ戦には向いている。戦いを継続する、もしくは進駐してきた米軍に抵抗をしようとしたらいくらでも方法はあった。血気さかんな軍人なら、個人になっても戦うことはできたであろう。米軍にしたって安全に統治できるものであれば、信託統治のような形をとり、軍政を引きはしなかっただろう。テロが頻発する今回のイラクにおける占領といったいなにが違っているのか、疑問に感じた。

もちろん、一つは国家の背景の差があるのだろう。アジアの極東とイスラム圏の文化的、宗教的、国民的な違い大きい。しかし、日本でも特攻隊を始めとする、あるいは武士道をはじめとする殲滅してでも敵に向かうという気概が当時あった。これは、イスラムで殉教をすすめる文化的、宗教的な動機としてはあまり差がないように感じる。日本の軍人でも、イスラムでテロを起こしている戦士たちに抵抗の気概にはまけずおとらずあったに違いない。宗教としては精華されていなくとも、国のために、郷里のために死ぬという気風がった。これは、いまのイスラムでの米軍への抵抗勢力の気持ちと大して変わらないのではないか?

もちろん、時代背景は大きく違う。当時は、CNNもなかったし、携帯式のロケットランチャーもなかった。情報のソースもなければ、効果的に抵抗する手段もなかった。アメリカに対する認識も大きく違うのだろうか?鬼畜米英と教えていた教育の中では、とてつもなく歪曲された米国像が日本国内にあったと私は聞いている。ちょうど、ある経営者のドキュメンタリを読んでいるのだが、家をやかれ、親戚を失い、財産を失い、さんざんな目にあっている体験が克明に語られていた。当時の米軍を恨みに思う気持ちと現在のイラクの人々の気持ちにある程度の共通点があるのではないか?

米軍の動機も大きく違うだろう。太平洋戦争を遂行しなければならなかった背景には、確実に戦前の日本の政治的、経済的、そしてなにより武力的なプレゼンスがあったということだ。これらを制限し、日本を二度と立ち上がれなくしなければいけない、せざるをえないと言うのが当初の米軍の日本の統治政策であった。まあ、途中からは米軍を日本に駐留させるということ自体が、ひとつの占領の目的になったのだろうと、それがいまだに続いているのだろうと、は、想像する。まだ、当時の日本人には自分達が仕掛けてしまった戦争に敗れたという気持ちがあったのかもしれない。しかるに、イラクへの米軍とその同盟軍の侵攻の背景には、もっと政策的、米国の利益確保が見えている。イラクの人々にしたら非常に理不尽に感じるであろう状態に陥っている。

■それは、リーダーシップなのか?

私は、この2つの国の占領政策の受け入れ方の差は、あるいは政治的なリーダーシップの形の違いにあったのではないかと考えている。どれだけ、批判する人がいようと、米軍が進駐してきて逃げ出したりする政治的指導者は当時の日本にはいなかった。それはプロパガンダといわれるかもしれないが、玉音放送を聞き、粛々とそれを受け入れる体制が敗戦の当時でも日本には存在していた。それが違いではなかろうか?

■関連リンク
America's Role in Nation-Building: From Germany to Iraq  by RAND
米兵は「最後の人間」か? (HPO)
ビジネスとしてのイラク統治
平和を乱すもの
距離、時間、そして統治と戦争

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コメント

アメリカによる二時大戦後の占領と今回のイラク占領を同一源で論じる話が良く出ますが、この2つに関しては根本的に違うものだと理解すべきだと思います。

別に日本人が偉かった訳じゃなくて。

まず、1つに、(これが正しいかどうかは別にして)言われるのは江戸時代以降、日本人がお上に比較的従順な国民とされたという言説。
それを引きずっていたから、政府が幸福を決めた以上、国民レベルでの大きな抵抗がなかったと言うことです。

そして、もう1つ、(こちらの方が理由としては大きいでしょうが)、キリスト教世界とイスラム教世界には中世、十字軍以来、深い溝があると言うことです。
イスラム教文化とアジア(日本)文化の単独の比較では意味がないでしょう。
イスラム教とキリスト教の関係性の中からこそ浮かび上がってくる問題なのです。

適切な比較かどうかはわかりませんが、日本が中国や朝鮮半島を再占領したと仮定した場合に中国国民、朝鮮半島に住む人(これは南北ありますね)が感じる反感に近いものがキリスト教徒に占領されているイスラム教徒にあると考えるべきだと思っています。
そう思うと、今のイラクでの問題の起源が見えてくるのではないでしょうか?

ヨーロッパに比べると歴史的な(数百年スパンではですが)アメリカが、まさに日本やドイツと同じような占領政策でできると思いこんだことが今回の問題の根源だと思いますけれどね。

投稿: Eddie | 2004年4月10日 (土) 08時59分

ああ・・ぼくもEddieさんとほとんど同意見なんですが..ちょっとだけ..

やっぱ・・テロが起きる背景って「理不尽」ってのが大きい感じがして...

で、今回の場合なにが理不尽かというと、
まず、アメリカが仕掛けた理由に大儀はないですし...(どうみても、あきらかに)

それはいつもどおりの政治的な仕掛けだからまぁ置いておくとしても...
共時的にみても「中東全体をアメリカが狙ってる(イスラエルを中心に)」って感じがすごくするって感じで..

アメリカのほうとしては、
<中東の安全保障のために介入している>という立場をとるのかもしれませんが、もはや冷戦的な陣地とりは終わったはずなのにそういうことが続いてるってのは....やっぱハタからみると、「..石油欲しいの?」、って感じですよね
(でも、ここはビミョーです。極東さんとかは安全保障バランスで説明してくれるだろうけど..)

んで、通時的に見た場合も
「Bowling for columbine」なんかで描かれてるように、アメリカって・・余計なことでちょっかい出してっては引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、片付けずに逃げてくんですよね..

(んで、そのツケが自分とこ回ってきたら怒るんですが..)


そんな感じで・・・・「あきらかに理不尽」的な不満がたまってるんだと思います
そして、
そういう不満はテロという手段(?)によってしか表明できないほど追いつめられている、と

誇りも何もかもズタズタにされてて、しかも国際的には5大国なんてのが幅利かせてます...「自分たちはいつまでたっても舐められてる(マイノリティ)」イメージってのはあると思います。そして、その意見が国際的にはそれほど評価してもらえないのとかも...(←ここ、びみょーです)

それに対して日本の敗戦ってのは・・

いちお「戦争」っていう国家的選択を行なって、然る後に負けたわけだから・・・・筋としては完結してますしね...

そういうわけでテロを起こしてもしょうがないかな、と..
(あと、東京裁判とかヒロシマとかもしばらくの間は報道管制って感じだったはずですし...もちろん、日本の国民の国民性って問題もありますが..)


・・・・そんな感じかなぁ、と

投稿: m_um_u | 2004年4月10日 (土) 14時02分

Eddieさん、はじめまして、こんにちわ、

コメントありがとうございます。アメリカが大きな勘違いをしていた(いや、まだしている、といったほうが正しいですね)ということが今回のイラクに関する諸問題、テロ等の原因であるということは同感です。ご指摘のように、戦争に至る過程の中で「十字軍」などと一国の指導者が言っている始末では、あきれるよりほかありません。たぶん、米国はおどろくほどずさんな占領計画しか持っていなかったと感じられます。

米国は、ヴェトナムでも同様の間違いをしています。中南米もほんとうに力で押さえ込んでいる様子がよくわかります。先日、「ブラックホークダウン」という映画をテレビで見ましたが、占領政策でこそありませんが、アフリカでも失敗を続けています。地域、歴史的背景、宗教、地政学上の位置を問わず、戦後の反共産圏の動きの中で、米国はいくつも間違いを犯してきましたし、共産圏が力を失ったいまも同様の間違いをつづけています。このような失敗の歴史の中で、なぜ日本の占領政策がうまく行ってしまったか、なぜいまもその占領政策の延長線上に日本がいるのか、これが私の根本的な疑問です。

ちなみに、江戸期から明治維新を通じて一揆等が頻発したという歴史もあります。明治の最初の数年の一揆だけでも千件を数え、西南の役など内乱状態に陥ることもしばしばであったと私は認識しております。戦中を通じて米軍は、日本の兵がどれだけどう猛かをプロパガンダしましたし、また実際に日本兵はすさまじい戦い方をしておりました。現実に、中国内では終戦後も戦いを数年にわたり続けた日本人がいると聞いております。決して、日本人は本来与し易く、統治しやすい国民ではなかったはずです。私はあまり過去を知りませんが、ここ20年から30年程度のあいだの飼い慣らされたような日本人が異常値であると感じております。

投稿: ひでき | 2004年4月10日 (土) 17時17分

m_um_uさん、

おはようございます。お返事が遅くなり失礼いたしました。どうもイラクの占領政策に納得がいかなくてコメントを控えておりました。まだ、納得がいかないのですが、ちょっとだけ興味深いことがあったので、疑問を抱えたまま書きます。

その「?」を実体化させたくてイラクのCPAの、イラク統治評議会というんですか、憲法の部分を読んでいました。なぁんかどっかで読んだような言葉がならんでるなぁ、という気がしたのですが、詳細は今は追いません。このCPAの頁のIPアドレスを調べました。そしたら、131.84.1.133でした。んで、131.84.1.*番台を調べたら、dtic.milというのがでてきました。これは、

Defense Technical Information Center

というところだそうで、これは、

Who We Are?

The Defense Technical Information Center (DTIC®) is the central facility for the collection and dissemination of scientific and technical information for the Department of Defense (DoD). As an element of the Defense Information Systems Agency (DISA), DTIC serves as a vital link in the transfer of information among DoD personnel, DoD contractors and potential contractors and other U.S. Government agency personnel and their contractors.

と、頁の最初にあり、要は、国防省の中で技術情報を集めたり、広めたりする機関であると、いうことで、多分メールかネットのサイトで軍事情報を配信したりする機関であるようです。要は.milですし、米軍の中の機関ですよね。こういう機関は少なくともCクラス以上のIPの割り当てを貰っていると思います。このDTICが、イラク統治評議会のサイトを少なくとも提供しているわけですから、やっぱりあまりにあからさまな軍政の一貫であることが、証明こそできないですが、うかがえるわけですね。

あんまり、m_um_uさんコメントの内容に即したことではないので恐縮ですが、米軍の態度がこんなところにもうかがえるのだな、という情報提供として書きました。翻って、日本の占領政策とその後については、また稿をあらためて書きます。それこそ、イラク統治評議会の暫定憲法との比較とか面白いかもしれませんね。

それに、案外ネット上でも調べられることってあるんだなと思いました。

投稿: ひでき | 2004年4月11日 (日) 07時59分

あ・すごい(笑)

いや、こういう方向は思いつきませんでした

そして、ひできさんのおっしゃるように、これは面白いですねぇ..

そしてちょっと思うのですが、やっぱこういう風に外堀からちょっとずつ埋めていくのって重要ですよね。
ぼくらはそれ関連でなにかを発表するわけではないけど、自分なりの考えの指針にもなるし..

こうやってネットという場を借りてるってことで、誰かの役に立つかもしれないし..


・・・いつもながらひできさんには刺激を受けます

投稿: m_um_u | 2004年4月11日 (日) 15時24分

あ・ちょうどいま読んでるやつに、アメリカの国際法違反について書いてあって、けっこう分かりやすい感じです。
(『「世界無秩序」克服への道(上)』、「世界」2004.4)

っていうか、このインタビューは、<軍事力に頼らなくてもなんとかなるのに(実際アメリカもそうしていた時代があったし)>、ってが目玉ですが...

・・いちおご参考に m(_ _)m

投稿: m_um_u | 2004年4月14日 (水) 14時59分

m_um_uさん、こんにちわ、

ハーバマスですね。ちょっとネットを探したら、例のギョーダイさんがコメントしているのが見つかりました。まだちょっとイメージわきませんが、探して読んでみます。


ああ、読む本がいっぱいで...読書のスピードの私にはつらいです。現在、いまごろなにをという感じですが、「歴史の終わり」を読んでいます。

投稿: ひでき | 2004年4月14日 (水) 16時56分

あ、あ、あ、いまごろ気がついた。ああ恥ずかしい。CPAって「暫定占領当局」じゃないすかね。Defense Technical Information Centerにあって当然じゃあないですか!!!
ちゃあんと、ありましたよ、"Who We Are?"のページに!国連の所属なんですね、一応。まあ、それでも米軍一色だとは思いますが...国連の一時的な統治政体ということですかね...

The Coalition Provisional Authority (CPA) is the name of the temporary governing body which has been designated by the United Nations as the lawful government of Iraq until such time as Iraq is politically and socially stable enough to assume its sovereignty. The CPA has been the government of Iraq since the overthrow of the brutal dictatorship of Saddam Hussein and his deeply corrupt Baath Regime in April of 2003.

http://www.cpa-iraq.org/bremerbio.html

ああ、はずかし、はずかし。私にゃ、イラク問題をコメントする資格ないっすね...

投稿: ひでき | 2004年4月15日 (木) 15時00分

(笑)まぁ、日記ですし..
それに、ぼくなんか最初から分かっちゃいませんでしたしね
(きゃっ、はずかしい(≧∇≦))

投稿: m_um_u | 2004年4月15日 (木) 21時05分

いろいろ数字で考えていくと、

お上に弱い→玉音放送で納得しゲリラ抵抗はしなくなる

ということはたしかですね。しかし、その後の占領政策で、ドイツと比較しても、圧倒的な少額で復旧をなし遂げた、ということが説明できない感じ。

「ビジョナリカンパニー」という本があります。ここでの勝利の原則に関する結論が、結局、当時の日本にはあった、ということではないかと思う次第です。

投稿: miyakoda | 2004年4月24日 (土) 01時37分

miyakodaさん、

「ビジョナリーカンパニー」を恥ずかしながら読んでいなかったので、アマゾンへ行ってきました。

企業を組織する人間が企業内に活力を生み出すのは、カネでは計れない動機づけにあるというシンプルな「真理」が、ライバル企業と比較された各社の資料、エピソードから浮き彫りにされる。

昨日もある人と話していて「企業というのは結局は社長そのものだ」ということになりました。国と企業を同列でならべることは、検証が必要だと思われますが、個人的にはどのような集団でもその行く末を決めるのはリーダーであるように考えます。

日本の国のリーダーシップもどうなるのか、はなはだ微妙なところがりますね。もっとも、自分の率いる集団に対する私自身のリーダーシップはどうなんだとか、つっこまれると言葉を失ってしまいますが...

投稿: ひでき | 2004年4月24日 (土) 09時21分

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