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2004年4月16日 (金)

ビジネスとしてのイラク統治

■イラクの情勢判断って...

やはり、自分は無知なんだなと思った。二次情報にふりまわされるのでなく、一次情報に当るべきだとやっと気がついた。それに、あらためて餅は餅屋だなと感じた。自分の立場のないところで、特に今回のような問題を論実のは問題ありだ。自分の得意分野からすくなくとも発想すべきだ。それやこれやで、以下の試みをした。

■ビジネスプランとしてのレポート

1年前、Council on Foreign Relationsという機関の特別対策本部があるレポートを発表した。これは、"Iraq: The Day After"というレポートである。このレポートの中で、自分の力で歯が立ちそうな"Executive Summary"を読んだ。一読して、ビジネスプラン(事業計画)だなと思った。実際は、政治的な助言として書かれたレポートであるが、商売人を自認する私としては、これを事業計画であると感じた。以下、このレポートをビジネスプランとして読んでみたい。これと関連して、CPAの予算書も少々分析した。

表面を読んでいるだけなら、明らかに外交問題の解決を記述しているように思える。しかし、文章の裏面を考えると壮大なビジネスのヒントが隠されているように私には感じられる。このレポートは、米国の戦後統治で利権を守るためには、米国が何をすべきかがかかれている。

しかし、このレポートから導かれるであろう行動計画は、必ずしも米国全体の国益とかなわないように感じた。これは、特定のグループの利潤を追求するための事業計画だ。もし自分が企業家の立場で、本計画に参画しているとしたら、絶対ビジネスプランを綿密に練ってこのビッグビジネスは参加しようとするだろう。

たとえば"Forward"で「戦後、国家を再構築する過程は、合衆国政府、その他の政府、国際機関、そしてNGOの責任である。」と書いてあるのは、「この過程で、合衆国政府はのみの利益を優先すべきである。その他の機関には、責任だけを負わせればよい。」といっているようにと思えてしまう。ちょっと先入観がありすぎるのだろうか?

もし、イラクの復興のような利益をあげるビジネスを合衆国政府と企業集団がいかに構築するかという観点から本文章を読むと、非常に示唆に富んでいるように感じる。また、ビジネスプランとして読むこのレポートは、この発表から1年経った現在(平成16年4月)のイラク情勢を理解する助けになると思う。

■4つの鍵

サマリーに書かれている4つのキーについて簡単に書きたい。これはよくビジネスでいわれる成功への鍵(Key for Success、KFS)の類である。(以下は、私自身の解釈で、しかもsummaryに基づいて書いているので、厳密に知りたい方がいればぜひ原典にあたってください。)

#1 イラクの未来に対するアメリカの政治的な関与

ここでは、予算規模と事業期間について述べられている。2.2兆円(200億ドル)を越す年間予算が、中期に渡って必要とされるという。しかも、長期にわたって米国政府はイラクにかかわるべきであるという。ビジネスとして考えれば、これは数兆の規模の売上を上げうる計画であり、長期にわって利益をうけるシステムをイラクに構築できることを示唆している。

ちなみに、この事業計画の実行部隊であるCPAの予算書をざっと分析(参照)したら、イラクの政府予算で数年に渡って1.4兆円から2兆円に及ぶ支出が予定されている。この中で、不思議なことにこのうちの1兆円から1.3兆円が「finance」という項目で支出されることになっている。教育、健康、住宅などのイラクの人々の実質的な救済につながる予算は、のこりの数千億円の予算規模にしかならない。しかも、予算上の欠損は借り入れなどでまかなわれるのではなく、Oil for Food基金から当られると言う記述がある。(ほんとうにOil for Foodは、利害の塊らしい。)一体新たな借り入れも行わないのに、financeという予算項目は何を意味するのだろうか?もしかすると、前政権が負った対外債務の返済にまわされるのだろうか?経済封鎖を受けていた国が、10兆円に及ぶような負債があったのだろうか?

あ、あるある、あるんだ、イラクの対外債務。湾岸戦争の賠償金や未払い利息などをいれると、日本円換算で約40兆円にのぼる対外債務(参照「侵略の動機」)をイラクは抱えているらしい。しかし、この返済自体が巨大ビジネスになる可能性がある。不良債権ビジネスみたいなものが可能だ。あ、でもこれは二次情報しか確認できなかったので、参考情報とする。

ちょっと余談だが、CPAの2004年イラク予算に、凍結された前政権の米国における預金等について記述がてあった。それによると、約1800億円におよぶイラクの資産はいつのまにか米国の特別予算に計上されていると言う。取るものはとって、他の国の債権は放棄させて、新イラク政府からしっかり残りを返済させるというすばらしいビジネスプランといえよう。

#2 イラクの文民を保護する

イラクの治安を維持することの大切さ。これは、イラク政府予算等だけでなく米国軍を駐留させることが大きなビジネスになるということを示唆しているように思われる。7.5万人の米兵を置くことを想定しているが、この規模の軍隊が必要とする年間経費はどれくらいのものになるのだろうか?彼らが消費する食料や、サービスなど、膨大な需要を満たす供給が必要になる。

また、投資を呼び込むにも治安の安定は絶対である。特に、最大の産品である石油採掘施設の保護は重要課題であろうが、これも治安の安定が前提条件だる。文民警察ということに触れているのも、国際人材派遣業が成立するというビジネスのヒントになるのだろうか。なにより絶対必要なのが油田と石油関連設備周辺地域の治安確保であろう。

#3 紛争後の移行と再構築の重荷を分け合う

ストレートに、ブッシュ政権が、紛争後のイラクのコントロールを握ろうとしている印象を減らすために、国際機関と他の国々がかかわることが必要だといっている。一方、初期段階で米国のイラクにおける主導権を他国あるいは国際機関あけわたすべきでないとも、主張している。ビジネスの競争でも、一人勝ちしている印象をいかに与えずに、実権をにぎるというのが基本。ビジネスの利権をいかに確保しながら、米国の印象をよくするかが大きな鍵になるのだろう。これは、競争の戦略から考えると理解できるプロセスではないか。

#4 イラク人を復興のプロセスを通じて利害関係者にする

イラクの復興は、イラク人がやるのだと思わせておかなければならない。政府は、公共機関にイラク人が重要な役割を果たし続けることを保証しなければならない。これには、戦後の憲法で連邦制をとらせることも含まれると言う。「分割し、統治せよ」ということだろうか。暫定憲法も、暫定政府も、その後の選挙のプロセスも、イラク人が主体をとっていると思っていることが大事である。

その他、石油産業の再生、新規の石油開発など、利益を生みそうなプロジェクトがイラクには、目白押しだ。イラクの新しい政府予算には、70億を超えるコンサルティング予算が組まれている。

■石油産業の取り扱い

全体を描き出す前に、ごく一例として以下のセクションを示す。これは、とてもあからさまにビジネスを目指しているように思われる。

The Iraqi oil industry.U.S. officials will have to develop a posture on a range of questions relating to control of the oil industry, such as how decisions on contracts for equipment and oil-field rehabilitation will be made; who will consider and make judgments on the viability of executory contracts for development of oil fields (at least some of which have as a precondition the lifting of sanctions); and what will be required for transition from the Oil for Food Program to a transparent and accountable indigenous system to receive and disburse oil-related revenues. The Task Force recommends that the administration strike a careful balance between the need to ensure that oil revenues benefit the people of Iraq and the importance of respecting the right of Iraqis to make decisions about their country’s natural resources.

興味深いセクションなので、ほんとに下手だが和訳を試みる。

イラクの石油産業
合衆国の政府高官は、石油産業をコントロールすることに関係していくつか疑問を綿密に考えておかなければならない。その質問というのは、(石油関連)設備と油田を回復させる契約についてどのように意志決定がなされるか?、未履行の油田開発契約の実効可能性についての協議と判断を誰が行うか?(すくなくともいくつかの契約の履行は禁輸解除の前提条件となる)、Oil for Foodプログラムから、石油関連の収入をあげてそれを支出できるような、透明で責任のある(イラク)固有の体制への移行に必要な条件はなにか?、といった内容である。

特別対策本部は、石油収入がイラクの人々に利益を生み出すことを保証する必要性と、イラクの人々の自国の天然資源について決定をする権利を尊重する重要性との間で、政府機関(administration)は注意深い比較検討をすることを勧告する。

■これって自分なりのことばで言い換えれば...

これを読んで、自分がたまたまこの特別対策会議に加えられたビジネスマンだとすれば、自分は以下のように計画して、利益をあげるべく行動すると思った。

イラク統治ビジネス計画

 ・目的: 
    独占的な収益源の短期的、中期的な確保 

・予想予算(売上)規模:
     数兆円/年 

・期間: 
    最低で初期段階3年、長いほうがよい。
但し、独占的な地位が崩れる前に投資回収、撤退 

・収入源(顧客又はサプライヤー): 
    米国議会による米国政府予算配分 
    同盟諸国からの資金提供 
    イラクの石油をはじめとする天然資源売却益 
    Oil for Foodプログラムの基金 
    40兆円に及びイラク対外債務返済のCFによる金融収入 

・関係者対策(stakeholder):
   
独占的な利益を守るために、以下の関係者対策をとる。
     米国議会対策:アメリカの国益にかなうことだと考えさせる。 
    米国民対策:イラクへの関与への関心を失わせない。 
    諸外国対策:アメリカ主導だと思わせないこと。 
    国連対策:国連を看板として使うが主導権は握る。 
    イラク国民対策:従順すぎず、過激すぎず、油田地域への影響の排除 

・競争戦略:
    自分達のグループ外の供給者の排除もしくは下請化(supplier) 
    イラクの連邦制移行による分割統治、CPA設置(buyer) 
    諸外国の干渉の排除(potential entrants) 
    国連による干渉の排除(substitutes) 

・利益をいかにあげるか(KFSのリソース): 
    以下の契約をいかに早期に独占的に獲得するか。 
    -米国軍の補給、移動にかかわる契約取得 
    -諸国軍の補給、移動にかかわる契約取得 
    -暫定政権維持のコンサルティングビジネス(特に金融面、石油面) 
    -石油設備再生にかかわる契約取得 
    -イラク暫定政経樹立後の開発、建設、物資供給、石油関係ビジネス契約

現実がこの通りになっているのか、どうかは保証のほどではない。一応、この特別対策本部が、フォローの論文をあげていたので、リンクを示す。


米外交問題評議会タスクフォース・リポート
「戦争から一年を経たイラクの現在と未来」
Iraq: One Year After

下手な訳をしてから気づいたのだが、実は「フォーリン・アフェアーズ」に「The Day After」も「<米外交問題評議会リポート> 戦後イラクの改革をやり遂げるには」というタイトルで昨年翻訳、掲載されていたらしい。購読者でないので、ネットでは論文は読めなかった。どこかでバックナンバーを探してみよう。

■追記
finalventさんから「戦後イラクの改革をやり遂げるには」が、「論座」2003年5月号に掲載されていると教えていただいた。「朝日新聞社の本」から、発注可能の模様。あるいは、フォーリン・アフェアーズの論文集にも再録されているらしい。
・もう疑いだすときりがないのだが、「U.S. Identifies Front Companies for Saddam Hussein Regime」という記事がCPAのサイトに載せられていた。もう米国はイラク統治の体制を築き終えて、「潜在的な参入者」を引き落としにかかっているように感じられる。

■追記2
「壊れる前に…」のウニさんが、フクヤマのインタビュー記事を紹介してくださっていた(うにさん、ありがとうございます)。ちなみに、Al-Ahramは、アラブ世界で一番古くから続く新聞らしい。フクヤマが、エジプトとはいえアラブ世界の新聞のインタビューに応えていると言う事自体、大変興味深い。フクヤマの最新の著作の「Nation Building」に挑戦したい(けど、語学力がおいつかないかな...)。
歴史に終焉はいつ、どのようにやってくるか by うにさん
"Open-ended history" at Al-Ahram by Francis Fukuyama (interview)

■追記3 平成16年6月25日

本日、報道機関からイラクへの統治委譲が完了したと報じられた。一方で、テロが横行し毎日死者がでている。しかも、最近は米兵よりもイラク人の死者、負傷者が多いように感じる。CPAのページも特にファンファーレを流しているわけではない。一方、ブッシュ大統領の再選をさまたげる動きが米国内であるとも聞く。ほんとうに一体今回の戦争で誰が得をしたのだろうか?誰のためになったのだろうか?

■参照リンク
一部の支配階級とそれ以外の一般ピーポー by it1127さん
占領とレジスタンス
平和を乱すもの
距離、時間、そして統治と戦争

■追記 平成17年2月1日

極東ブログの「イラクで一兆円近いカネが消えてましたとさ」という記事を大変興味深く読ませていただいた。本記事で予算の分析をさせていただいたときを思い出した。やはり、「finance」で計上されていた部分などを含まなければ、規模からいえば兆を超えるはずはないはずだ。いずれにせよ、CPAはそのホームページが米軍関連のドメインであったように今回の件に米軍がからんでいないわけはないと考えられる。

http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2004/04/post_1.html#c167175

■追記 平成19年1月5日

Danさんが「NHKでイラク資金について報道してたよ」という記事をあげていらっしゃった。

盗人にも200億ドルの理

なんかいまごろマスコミがとりあげることって、CPAが存在していたころから明々白々だったじゃかなという気がした。↑で書いたように堂々とCPAのホームページに「finance」なる項目で使途不明金が計上されていた。このタイムラグはなんなのだろう。

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コメント

拝見しています。CPA関連の文書や、"Iraq: The Day After"も非常におもしろいです。純粋に趣味的なものなのですが、いま、ちょうど、「中国が戦後イラクに進出する可能性」とかも調べていたのですが、The Day Afterのチームの人たちと似たような背景の人がぼろぼろ出てくる論文とかを見つけてみていました。ここ三年ぐらい、中国は国内インフラを一気に整備する必要性があり、石油の調達でけっこう逼迫していく予想が出ています。ですが、スーダンでの油田開発では、中国までのシーレーンの問題があり、あまりアメリカとコトを構えたくない時期でもあり、積極的な形ではイラクへの浸透は進めない可能性が高いと思っています。

TDAは、ぞっとするぐらいイラク国内の宗教や部族問題の記述がありませんね。万一、これがプロジェクトの基本コンセプトだとするなら、これらの問題をすべて無視した上での全体像構築ですので、プロジェクトの挫折を予感させるのではないかと思います。

しかし、実際には、ほかにもたくさんの情報があるでしょうから、これだけでは判断できない、ということもあるのですが。

一方、日本はどうなのか、というと、たぶん、TDAほどの計画性さえなく、アメリカにひっぱられたままのその場判断だけ、ではないかと心配いたします。

投稿: iyakoda | 2004年4月18日 (日) 02時02分

iyakodaさん、

こんにちわ!いつも読ませていただいております。

そうなんですよね、この辺の文化無視みたいな感覚は理解しがたいというか、ほんとうに火種のもとだと感じます。

さっき、「Foreign Affairs, Japanese Edition -Anthology Vol.11」(http://www.foreignaffairsj.co.jp/themeA11_mokuji.htm)つうのをみて(この本ほしいとか思っちゃいましたけど)、若干TDA以外の論文には、文化とか宗教とかの問題もとりあげられているようですね。

ほんとうになにより、米国がこれだけ用意周到にイラクの統治について考えているのに、「赤子の手」状態ですよね。iyakodaさんが書かれているように、日本の石油政策は大丈夫なんですかね?がんばれ出光!

投稿: ひでき | 2004年4月18日 (日) 21時54分

こんにちは。「壊れる前に…」のうにです。先日はトラックバックありがとうございました。

読んでないのですが、フクヤマ氏が Hayek という経済学者の伝記に書評を書いているのを見つけました。もうご存知かもしれませんが、一応、URL をご連絡します。私は経済学のことは何も知らないので、ひできさんのご興味を惹くものか、全くわかりません。関係なかったら、ごめんなさい。

http://wwics.si.edu/index.cfm?fuseaction=wq.essay&essay_id=72344

投稿: うに | 2004年5月12日 (水) 12時52分

うにさん、こんにちわ、

コメントいただきありがとうございます。さっそくフクヤマのレビューを印刷して読み始めました。面白そうです。うにさんは、ほんとうに不自由なく英語の文献を読みこなしていらっしゃるのですね。すばらしいです。

いま、戦中から戦後にかけての日本の政治史等を読んでいます。ほんとうにイラク統治とは、対照的だと思っています。

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: ひでき | 2004年5月12日 (水) 17時06分

ひできさん、大変興味深い分析だと思います。私には範囲が巨大な分野であり、かつ総合的なコメントはできないのですが、要するに国際協力とか途上国支援のために公的な資金を活用する場合、2つのやり方があると思います。

第1に、技術支援です。これはノウハウの提供とか、人的資源の派遣・投入、会議の開催なども含めた、いわゆるソフトの部分のもの、それから必ずしもソフトでなくても無償で提供される類の資金、短期的な人道援助などはこれに入りますし、国連がやるようなものもこれに入ります。出所について元をたどっていくと、これはどこの国でも同じだと思いますが、外務省(アメリカでは国務省)にたどり着くと思います。

第2に、貸付です。これは、国・機関として別の国に貸すわけですから、ご指摘のように債権化します。「貸す」わけですから、より多くの金額をアロケートできます。どちらかといえば中期・長期的な復興・成長を狙った資金繰りが可能になります。国連というよりは国際金融開発機関が担当し、出所について元をだとっでいく、これまたどこの国でも同じだと思いますが、財務省にたどりつくと思います。

さて、よく考えてみると、冷戦それから冷戦直後、つい最近まで、この両者はかなり分断していたといえます。カンボジア然り、それからアフリカや欧州の紛争国然りです。紛争後復興支援というよりは、人道援助のための物資補給をどうするかなどの観点で、紛争国に対する支援は行われていました。そして政治的に一定の安定をみるまで、「貸す」ことでゼロの桁がちがう資金を融通できる仕組みは、それこそリスク回避という観点から手をだせなかった。

2002年に東京で、アフガニスタン復興支援会議というのがありましたね。アフガン復興に、これだけのお金がかかるよというニーズ調査報告が提出され、それに対して各国・各機関がいくら出せるというのを表明しあう、Pledging Meetingでした。そう、この時おそらく初めて、いわゆる政治・外交上の観点から人道援助・政治的対話(あるいは無償の支援)をつかさどっていたForeign Affairsと、財政上の観点で中長期的な資金拠出を行うTresuary的な感覚とが、いわば川の上流から手を結んだのです。似たようなことがスリランカ復興支援でも起きました。

イラクについては、このトレンドのコンテクストで考えてみるのもいいのではないかと思います。ご指摘のとおり、イラクには未償還の債務があり、その意味では「貸す」側はこれ以上に貸すことはできない。しかし「貸す」前提での資金調達以外、大規模かつ中長期的な復興支援はありえない。それで各種の利害・利益と政治的なタイミングがかかわる場合に、何が発生するのか。もしかしたら、その産物がCPAの分析・見積もりであり、その次の展開として、米国の国連傾斜への方向性があるのかもしれません。

どうなんですかねえ。

投稿: koh | 2004年5月13日 (木) 03時44分

kohさん、こんばんわ、

うーん、面白い視点ですね。外務省と財務省が手を結んだ意義というのは、お話しを聞いた気がするのですが、理解しておりませんでした。

アフガニスタン、スリランカと違うのは、やはりイラクからは石油が産出しているということが大きいと思います。教科書どおりの話しで恐縮ですが、Inernational Businessのクラスで、一番国際収支に貢献するのは、鉱物の輸出だと習いました。加工業より<収支貢献が高いというのは、そもそも原材料なので、輸出の増加にともなって、輸入がふえるということがないというのが理由です。

ようは、石油ビジネスというのは、国としても非常に利回りの高いビジネスであるということですね。

と、いうことは、ビジネス的なセンスからいえば、最低限のインフラとセキュリティーの復興を外務省的な感覚の開発援助で行えれば、そのあとは石油プロジェクトに対して財務省的感覚で投資していけば、うまい組み合わせが組めるといことを意味するように感じます。

破綻しかかったサラリーマンに貸し込むサラ金があるように、莫大が債務を抱える国に融資する国際的な高利貸しとか、出てきそうですね(笑)。

投稿: ひでき | 2004年5月13日 (木) 22時01分

石油についてご指摘のとおりと思います。
外務=財務の対比で説明したのは、つとめて公的な側面に光を当てています。もちろん途上国に対する公的な資金援助が民間に向けられる場合もあります。説明上は、これは民間のみでやっていけない場合、つまり民間のみでは回収できない(と思われる)案件に対して、国際協力銀行でいえば「国金」と呼ばれる、旧輸出入銀行の業務、それから世界銀行グループでいえば国際金融公社がそれにあたります。石油関連のプロジェクトに対する出資も多くあります。
ちなみに、こういう噂もあります。
http://www.iht.com/articles/517201.html">http://www.iht.com/articles/517201.html

投稿: koh | 2004年5月16日 (日) 00時35分

kohさん、

大変興味深いですね。私が傾倒しておりますフランシス・フクヤマの最新の著作は、"State Building"というタイトルだそうです。フクヤマは、占領政策、開発政策に関する発言を最近ほうぼうでしているようですね。

別にフクヤマの方向性とコーリン・パウエルの方向性が一致する必要はまったくないのですが、イラク占領政策のていたらくをみていると、これからの国際情勢の安定においては、武力的な介入から、AUのみなさんが専門性を発揮されているInternatinal Developmentが、実はかなり重要性を帯びてくるのではないか、という気がしますね。

ちなみに、リンクを教えていただいたヘラルド・トリビューンの、

By tradition, the president of the United States gets to decide the head of the World Bank.

ってほんとですか?何故?米国ってそんなに出資しているんですか?かなり私にとって意外でした。

投稿: ひでき | 2004年5月16日 (日) 10時39分

本当です。世銀総裁はアメリカ、IMF専務理事はヨーロッパ、国連事務総長は(大体のところ)地域ごとに輪番(アジアからはウ・タントがやっていた時期がありました)というのが相場です。前者2つについては、ブレトンウッズ機関の成立プロセスに密接に結びついていると思います。後者1つについても、戦後の秩序安定のためのシステムという観点からは、同じような意味合いを持っていると思います。
実際、現世銀総裁はもともとオーストラリア出身ですが、マクナマラ総裁のころに米国籍に変わっています。ちなみにIHTの記事でいわれていることは、今度の大統領選で共和党が残るか、民主党が返り咲くか、に左右されています。

投稿: koh | 2004年5月16日 (日) 12時51分

共和党が残るか、民主党が返り咲くか、の間違いです。失礼しました。

投稿: koh | 2004年5月16日 (日) 15時32分

え?

あってますよ(笑)。

投稿: ひでき | 2004年5月16日 (日) 15時34分

あ、本当ですね。疲れ目ですねえ。失礼しました。
これから北九州出張に行ってまいります。

投稿: koh | 2004年5月16日 (日) 16時49分

面白い分析ですね。
とても参考になりました。ちょっと思ったのですが、アメリカ人には、思いっきり理想主義的で、父性的なところがありますよね。現実的な利益の確保は政権と結びついた企業が裏でしこしこやっているわけですが、大衆の支持を受けるためには、大量破壊兵器などのリスクファクターと併せて、こうした「きれいな顔」が受ける傾向があります。話してみると、教育水準の高い人たちの間にも、こうした「きれいな顔」の部分を本気で考えているらしい人がけっこう少なくないことに気づきます。表のきれいな面と、裏のより打算的な面とが、混然一体となっているところが、アメリカの強さでもあり弱さでもあり、とにかく「アメリカ的」なところなのではないでしょうか。以上、感想まで。

投稿: 山口 浩 | 2004年6月26日 (土) 11時01分

山口浩さん、こんにちは、

案外、米国にいると真剣に情報をさがすのでないと見つからない、という感触があります。一般誌のタイトルくらいをざっとながめ、TVのニュースを見ている限りでは、日本の新聞を読んでいる人より情報が遅かったり、偏っていたりします。まあ、私の語学力の問題もあったのかもしれませんが、一般の人が見ている情報源だけだと、山口さんのおっしゃる「きれいな顔」の部分しかみないで育ってしまう可能性があるように思います。

ほんとうに「華麗なるギャッツビー」とか「ナイン・ハーフ」ではないのですが、ニューヨークとかでばりばりにやっている人でも一皮向くととんでもない田舎出身だなんてことは、日常茶飯事です。あ、でも、決して田舎でが悪いなんていっているわけでないんですよ。私も田舎ものですしね。でも、米国の田舎ってとんでもなく田舎で、日本人を見たことないくらいはましなほうで、ほんとうにトレーラーハウスに住んでお風呂は言ったことあるの?、くらいの人が結構いたりします。

ああ、こんなことたとえコメントでも書くとやりでもとんできそうかな?

それでも、アメリカがすごいのは、エリートな人はめちゃくちゃエリートで、批判勢力がちゃんと存在して、しかもきちんとした仕事をして、きちんとした力をもっているところですね。彼我の差を考えるとはなはだ御寒い...

それにしても、なぁんか最近山口さんとずっとお話しているような感触があります。ほんとに一度お会いして意見交換 over a pint of beerとかどうですか?

投稿: ひでき | 2004年6月26日 (土) 15時47分

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