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2004年10月11日 (月)

べき法則とネット信頼通貨を語る夕べ! Second Impact

先日、前回に続き「べき乗則とネット信頼通貨を語る夕べ!」の第二回が行われた。メモをつくりながらも、うかうかしているうちにさかまたさんに先に記事を書かれてしまった。少々あせりながら、以下自分の感じたところを書きたい。ちなみに、全面的にさかまたさんの記事の内容を参考にさせていただいております。

コーディネータとして、順番が完全に逆ですね。orz。さかまたさん、ありがとうございます。

なによりも、今回はyujimさんに場所等のサジェスチョンをいただいたこと、しばたさんにも大変いろいろと段取りをとっていただいたことを感謝もうしあげたい。ラクーア最高でした。台風が近づく中、多くの方にご出席いただき、有意義な討論にご参加いただいたことに深く感謝させていただきたい。本当にありがとうございました。

しかし、私が連絡先を書き間違いなどして、だいぶ出席されるはずだった方にご迷惑をおかけしてしまった。本当にもうしわけございませんでした。

テーマ:べき乗則とネット信頼通貨を語る夕べ!  第二回(プレゼン編)
日時: 平成16年10月8日
場所:文京区シビックセンター 会議室 文京区の方にはどこの新興宗教かとかんぐられたらしい...
出席者:yujimさん、shibataismさん、さかまたさん、ゆきじさん、ryo1さん、Hiroetteさん、Pinaさん、ひでき

1.マジックカーブ -なぜ僕たちは「べき乗則」に魅力を感じるのか:blogしろうと「理論」批判 by yujimさん

yujimさんによるネット、諸書籍、記事等に蔓延するあやふやな「べき乗則」などに対する批判。「何がネットワークを構成するのか?」「そのネットワークは、定義からいって、あるいは操作的に得られる諸性質からいって、ランダムネットなのか、スモールワールドネットなのか、スケールフリー(SF)ネットなのか?」といった疑問に完全に答えられないまま、ここにも、あそこにもべき乗則が適用できる、近似式がたてられる、といった態度に対する批判であった(と感じた)。

「信じたい心」を増幅するネットワーク
ネットワークというどこにでもある不思議

質疑の中で、Mayfieldの議論に触れて「これが社会心理学の研究なら納得性があるが、ネットそのものの特性にのみ基づく議論としてはトンデモだ。」というやりとりのなかで、私はyujimさんの主張されたいことが腑に落ちた。適用されるべき理論を適用されるべき分野に適応するというのは、しごくまっとうであると感じる。もっといえば、近代科学というものは、ものを見るのにどこの平面で切ってみるのかという議論が一番根底にあるように感じる。

ちなみに、ラクーアでyujimさんとかなりの時間をかけて統計的な研究手法、とくにどのような分布がそこに期待できるのかを議論すべきだという共通認識を確認した。とかく世に平均の平均をとったり、RのRをとったりと、トンデモな研究方法をとる論文があることに深く同意した。

また、yujimさんとは、少々楽しみな企画が進行中。。。これはまたご報告できる日がくればご報告する。

2.べき上の法則とランチェスターの法則 by ひでき

私が思考実験として、オリジナルのランチェスターの法則に基づきランチェスター当時の戦闘機の戦闘により、べき乗則で近似しうるネットワーク図、リンク数の分布が得られることをプレゼンテーションした。

べき乗則とランチェスターの法則 PDFファイル
べき乗則とランチェスターの法則 (HPO)

3.Power Lowだけが全てじゃない! by Shibataismさん

ネットワークのリンク分布と、現実のブログ、Googleなどのネットワークのあり方について研究構想を発表された。研究の最終的な目的としては、「将来的にはポスト民主主義、理想的な合意形成」を考えていらっしゃる。前回の発表からより具体的に、「winner takes all」な世界からどうしたら脱却できるのか、ブログのトラックバックにその可能性があるのか、についての考察を行われた。yujimさんとのネット上での対話を通し、Milgramの実験でも70%がとどかなかったという事実や、現実のネットワークと理論上でのスケール・フリー・ネットワークが適合しない部分を指摘されていた。wikiでも展開されている。

wiki.shibataism.com

詳細は、ご本人のブログの記事をまちたい。

やっぱりネットワークは面白いと認識した件に関して
それでも信じたい「社会的ネットワークの魅力 」

4.ネット信頼通貨 by さかまたさん

さかまたさんは、かなり具体的にネット信頼通貨が成立すべきプラットフォームが満たすべき仕様について発表されていた。

人の欲望は、放置すれば限りはないかもしれない。しかし、効用曲線といわれる経済学の理論がある。これは、自分が一文無しのときの100円と、1億円もっている時の100円の価値を論じたものだ。0から100円を得たときは、非常に満足度がたかい。しかし、100円を100万回得て、1億円になったときにあらたに100円をもらってもあまり満足度はあがらない。

さかまたさんが問題とされたように、著作権などは人の効用曲線という欲望の限界を超えて価格が決定されている。「ビートルズのアルバムの値段は、30年前も今もあまり変わらない。」とおっしゃっていた。実は、価格の下方硬直性というのは、買う人がピンポイントできなかった昔の流通機構をそのままネット時代の今にまで引きずっているに過ぎないということだ。この問題点から、「mixi+楽天+アマゾンの書評」な感じのプラットフォームを考えられた。あ、あれ式が違いましたか?

5.ネットワークの違いがダイナミクスに与える影響 by ゆきじさん

ゆきじさんから、ご自身の修士論文についてのコメントをいただいた。「新ネットワーク思考」が出版される以前に、ネットワーク関係の研究成果についてまとめられ、再現する数値実証までやられていた価値は高いと感じる。物理学の枠組みのなかでは、きっとなかなか評価が難しいというのもわかる気がする。しかし、この論文発表時期にこれだけの内容をまとめるには相当のご苦労があられたと感じた。門外漢の私いうのも無責任だが、読ませていただいた日本語の論文、ネット上の記事の中で、3種類のネットワークについて数学的な検証も含めて最もまとまっていると感じた。

ネットワークの違いがダイナミクスに与える影響 PDF版PS版

6.それから、それから...

当日は、SWさんも参加され、「インターネットは80対20の法則を越える」というC-Netの記事について発表される予定であったが、お仕事のためご欠席となってしまった。また、P2P Todayさんは、当日会場の下まで来てくださったにもかかわらず、私の連絡先の番号を間違えてご通知してあったために、参加不能になってしまった。本当にもうしわけございません。恐縮ですが、ぜひ次回お願いいたします。などなど、さまざまハプニングがあった。Hiroetteさんからも、実際にクリエーターとしてのお立場からお話があった。飲み会編では、くりおねさんの参加までいただけた。また、ryo1さんの会社とある参加者の会社の間でかなり密な関係があることが発覚したり、こういうリアルで会うという企画ではかならず予想外のことが起こる。これだけご迷惑をおかけしていていうことではないが、醍醐味を感じる。

7.余談 ラクーア編

三次会として、yujimさん、shibataismさん、さかまたさんとおふろをあびならいいろいろお話をした。古代ギリシアにならって、シュンポシオンといってもいいかもしれない。ネットワークという新しい現実に対して既存の学問分野はすでに対応できなくなっているのではないだろうか、という話になった。学問というのは、常に変わっていかなければならないと私は思うのだが、既存の大学などの組織の枠組みそのままで「これは物理学、これは心理学、これは数学、これは経営学」という分け方では、いま現在生じている複雑であいまいな事象に立ち向かっていけないのではないだろうか?

一方で、「科学的な研究方法」の基礎というのは確実に存在する。統計学の基本的な考え方や、yujimさんが主張されている理論の適用範囲、あるいは統計的な手法の適用範囲の確認というのは、この基本に属するのだろう。初歩の初歩でいえば、レポート、論文の書式、書き方などというのも研究方法に入る分野だろう。一方、経営管理学修士や、法科大学院といった学問的な知見を生かした専門職業人の教育、育成というのももっともっと存在してしかるべきだ。この辺の研究機関と教育機関としての大学の切り分けと、それぞれの分野での研究者というより教育者の育成というのが大きな問題であるように思う。以上、余談であった。

■参照リンク
「べき乗則とネット信頼通貨を語る夕べ」を超えて (HPO)
第三回 べき法則とネット信頼通貨を語る夕べ! talking night cubed (HPO)

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コメント

>コーディネータとして、順番が完全に逆ですね。orz。さかまたさん、ありがとうございます。

いえ、むしろでしゃばってしまったかもと反省してます。ワタクシのテケトーなレポートより、ひできさんの詳細で正確なご説明はさすがです。第三回も期待してまーす。

投稿: さかまた | 2004年10月12日 (火) 05時51分

で、三回目いつやりましょうか?

投稿: ひでき | 2004年10月12日 (火) 17時49分

あの、、、全然この記事の主旨とは違うのですが、一応この会について文中でふれているのでトラックバックさせていただきます。

いつも楽しい企画をありがとうございます。

投稿: Hiroette | 2004年11月22日 (月) 00時03分

Hiroetteさん、こんばんわ、

とても楽しい記事をありがとうございます。

いま「第3回」の報告(勝手な感想?)を記事としてアップしました。

投稿: ひでき | 2004年11月23日 (火) 21時14分

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