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2004年12月 7日 (火)

[書評]人は変われる I can change!

  • 人は変われる―大人のこころのターニングポイント by 高橋 和巳さん
  • なんというかまさに私の生きているのは「小さな世界」なのだと感じる。本書との出会いもいくつもの偶然としか思えないような出来事が重なって現象した。なにかここのところ出会うキーワードが限りなく重なっている。一時期知人とのどうしようもなく偶然な出会いが頻発したことがあったが、今度はどうもキーワードが重なりすぎる現象が起こっているようだ。

  • 世の中狭い (HPO)
  • しかし、まだ今回のキーワードの重なりを自分の言葉で語りなおせるところまできていない。それでも、できるかぎり語ってみよう。そもそも私がこのブログで書いていることは、常に自分に手が届かないかもしれない課題に挑戦し続けてきたことの記録なのだと思う。

    たとえば、私が縁を感じてしまうのは、高橋さんの次のような言葉だ。

    私は、この相転移という概念が気に入っている。こういった物理学でいう相転移と同じような現象が中枢神経にも起こって、短い期間で神経細胞のネットワークが組み変わるということが起こるに違いない。

    高橋さんはこの文章を少なくとも1995年以前には書かれていたようだ。よく知られているように、もともと相転移前後の粒子の記述するために「べき乗則」*1が使われていたという。バラバシなどは、1999年以降にこの「べき乗則」がWebのトポロジーとして近似値であるらしいスケールフリーネットワークにおいて観察されることを証明した。

  • 複雑ネットワークの調査および問題定義 by 佐藤 史隆さん、 廣安 知之さん、 三木 光範さん
  • 決して高橋和巳さんはスケールフリーネットワークや創発やべき乗則をこの時点で予想されていたとは思わない。しかし、ネットワーク思考についてなんらかのイメージをもっていらしたのではないだろうか?そういえば、著者は脳機能のマッピングを研究された方だという。私もまがりなりにも感覚知覚心理学で卒業論文を書いたのだが、実は大学のころにホフスタッター中埜肇先生の影響を受けて「創発」やある種の相転移前後のネットワークの状態に非常に近いイメージを持っていた。これについてはまた機会をあらためて語りたい。

    先日から私はひとつ予想をたてている。それは、心理学=認知科学的な思考と現代のネットワークから得られる知見が近づいてきているのではないだろうか?ということだ。私のまわりでネットワーク的な思考を展開していらっしゃる方に、もともと認知科学、心理学系統の専攻の方が多いような気がしてならない。これは、インターネットというネットワークと大脳の機能という神経ネットワークとの間で相関性があり、類似の発想がお互いの分野で有効だからではないだろうか?

    では、ネットワーク思考やこうした心理学的なアプローチが前提とする主体はどこにあるのかという問題が頭から離れない。たとえば高橋さんは本書の中で「主観の再建」ということを言っている。たとえば、こういう言葉に私は強く動かされる。

    私の意思がどこから来ようが、神経細胞は私の意思を実現させるために動いていることは間違いないからだ。このとき、神経細胞はもう私の主観から独立な「客観的な物」はない(原文ママ)。すでに、主観性に利用され、主観性のために働いている「物」であり、私の主観性と対立することはない。主観性から独立した「客観的な物」はきえる。
    運命の自覚のとき---、それは主観性と客観性の交差点である。この交差点で、主観性は運命に浸透しはじめ、運命を動かしはじめる。

    ちょうど、竹田青嗣さんの本を読み終わったところだったのだが、竹田さんのいう「現象学的還元」と高橋さんの主観、客観の議論は私にはとても相関的に映る。

  • 現象学は〈思考の原理〉である by 竹田青嗣さん
  • あるいは、竹田さんのホームページで紹介されている「愚か者の哲学」という本の章立てと本書の章立てを比べるだけでも楽しくなってくる。どっちが哲学書でどっちがカウンセリングの本かわからない(笑)。あまりに、キーワードが重なっているように私には見える。それも、私の人の縁によっていずれの本とも出会うことができた。ここにかかわる方たちに本当に深く感謝したい。まったく、不思議でならない。

    私にいま必要なのは知性でなく、身体自体が生きようとする力の根源までさかのぼる純粋さを見出すことだと感じる。そして、本書や竹田さんの著作は私が生きようとする世界において、まさにこの世界自体が私に生きよ!と語ってくれる基本構造を解き明かしてくれているように感じる。強い、強い力を感じる。

    竹田青嗣さんの現象学的還元については、更にネットワーク思考における「信憑構造」への考察で触れたい*2

    あ、なにか一番大事なことを書き忘れているが、本書はカウンセリングの本であり、非常に心動かされるケースについて高橋さんが真摯に書いていらっしゃる。心理学用語としての「転移」の可能性を感じるが、なんとなく程度に悩みをもっている方には非常に参考になる本だと感じた。

    ■註
    *1 :もともと「power law」という言葉は、「べき乗則」と翻訳するのが定訳らしい。「法則」というと将来に対する拘束を含むようだが、「べき乗則」には拘束的な意味は薄い。

    *2 :いや、あるいは逆に言う方が正しいのかもしれない。現象学的還元で見出されるであろう信憑構造において、ネットワーク思考が実存するか、成立しうるか、と。

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    コメント

    ひできさん、こんにちは。

    私の原点のひとつ、竹田青嗣さんの名に懐かしさを感じ、コメントします。

    高3の秋の実力テストに彼のテクストが出まして。今までに無い問題(確かラングとランガージュの項)に驚き、国語の先生に聞きにいったところ、本(現代思想の冒険)を渡され、はまりました。

    そのせいで、大学も理学部に通いながら、哲学の先生(カント派で何故か心理学の学士号持ち)のところにちょくちょく顔を出すことになり、よく分からないキメラのような人間になっていきまして(中略)今に至ります。

    既に内容はほとんど覚えていないですが、その頃に読んでうだうだと考えたことが、今の思考の基盤になっているみたいです。

    ひできさんのおっしゃる、「腑に落ちる」状態になるには、私の場合、十年ぐらいかかるようです。

    投稿: Giraud | 2004年12月13日 (月) 05時08分

    Giraudさん、こんばんわ、

    遅いレスで恐縮です。竹田青嗣さんと格闘している気分だったので、結論がでるまでお返事できませんでした。

    なんか半信半疑ながらへんなところにでてしまったな、という感じがしています。

    いまの気持ちとしては、「クオリアっていうけど、それって『現象学的還元』とどうちがうのさ!」という感じです。やっぱり、フッサールって偉大なんでしょうかね?

    そうそう、Giraudさんに申し上げたかったのは、私の中学と大学の友人で上田徹というのがいまして、彼は本物の哲学者だと私は思っているのですが、いまブログで書いていることとか実は彼にかなり影響を受けているのだなと実感しています。彼と議論していたのは、実に20年前ですから本当に「腑に落ちる」までには時間がかかりますよね。

    投稿: ひでき | 2004年12月14日 (火) 18時46分

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