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2004年12月27日 (月)

ネットワーク、自己組織化、そして理解 The Moment of AHA!

先日書いた「対話、ネットワーク、そしてマッハの原理 Mach!」という記事で書きたかったことを、もうすこしわかりやすくしたらどうなるかにチャレンジしてみた。

今回の記事のベースとなるパワーポイントの内容は、既に「べき乗則とネット信頼通貨を語る夕べ ver.3.5」(近日公開予定!)でプレゼンさせていただいたもので、話すことにより自分で理解が深まったように思う。スライドの文章が英語で書いてあるのは、英文の方が文章の例として説明しやすかったので、ほんのしゃれのつもりで全部私のいいかげんな英語にしてしまった。

The Moment of AHA! (パワーポイントファイル)

伝わる・揺さぶる!文章を書く」宣言をしてしまった私としては、まずは言葉の定義から。

文章:単語が順番につらなり、意味のあるかたまりを形成したもの。
ノード:ある立場に立ったときに意味をもつととらえうる最小基本単位。たとえば、文章なら単語。
リンク:ノードとノードの関係、つながり。
ネットワーク:ノードのリンクにより形成された網の目のような組織構造。
レイヤー:上下に重なり合うそれぞれのネットワークにおいて、仮定されている一定のレベル。ある立場といってもいい。

結論からいってしまえば、いろいろあがいている内に自分が主張したいことはこういうことなのだとわかってきた。

文章の生成、会話の成立、社会的ネットワークにおける情報の伝播は、それぞれネットワークとしてとらえることができる。それぞれのネットワークのレイヤーでノードとリンクの定義は異なるが、自己組織的なネットワーク構造を相似的に持っている可能性がある。

ざっとおさらいしてしまえば、どうも私は現象学とネットワークをごちゃごちゃにしてしまっているのが悪いのかも知れないと反省しつつも、竹田青嗣的な意味での「現象学的還元」をして意識を遡及していくと(いや、そんなことしなくとも...)「文章の意味構造はネットワークで表現できる」という内なる確信にいたる。そして、もし文章というネットワークが自己組織的に生成されるという観点にたてば、「人の会話(発話)は、意味のネットワークを交換、自分の知識ネットワークに組み込むという理解、変容した内容を再発信することによる理解内容のチェックと発展、で構成される」であろう。さらに、広い意味での思考と会話がベースになっている「人の社会」は「多重ネットワークとして表現できる」という考えに到達してしまう、というところまでが前段の記事だった(かな?)。

まずは、文章を生成するということはどういうことか?

自分なりに自分の思考を遡及して感じていこうとすると、自分が自分だと感じられる「内側」においては自分の知識や言語は、「文章」というリニア(線形)な形になる直前に、別な形で表現されているように感じられる。なんというか、強い力をもった言語化する直前の形態が自分の中にあるように感じる。

高校生のころこの力を「火」にたとえたことがあった。言語化される前だからそれこそ言葉にならない力をもった状態があるという確信が自分の中にある。

この文章になる直前の形式においても、「単語」というノードを一定の傾向をもつリンクのしかたによって作られた意味表現のネットワークとして表現することは可能であろう。私には一般的な述語を使って書くことしかできないのだが、主語や述語、目的語といった機能をもった「単語」ノードのリンクの仕方が存在し、ネットワーク構造として「内側」に存在するのだと思う(*1)。

このリンクの特性をもったネットワーク構造体が、既に存在する文章から相似的に別な文章を生み出す様子を、こんな感じかな?という程度の確信でしかないが図で示す。

そして、文章の生成あるいは「発話」の直前において力をもつ単語のネットワーク構造体が存在するならば、それは下図で示したようにパズルの最後のかけらがはまる直前の状態のようなものだと感じられる。ここでは形成されつつあるネットワークとしての意味表現構造体(ネットワーク)に知覚を通して得られた感覚のかけらのようなものが集まって意味構造ネットワークにはまりこんで文章を形成し、「発話」という音声の振動に変換することにより外部化するというプロセスと考えられる。

いずれにせよ、こうして発話され外部化された文章もなんらかの形でネットワーク構造をもっているまま、なんらかの外側の物理的な存在そして変換(code化)されたと解釈できる。そして、文章のネットワークの塊りが、「外側」で独立した存在として漂流しはじめる。「I like the apple!」(ああ、英語がなんかおかしい!)と書いてある下の赤い小さなネットワークのアイコンを覚えておいて、次の図を見てほしい。

上図の「0.Initial」という段階では、脳内の表現として発話される直前の状態を示している。次の「1.Utter」において、一つ前の図で見たような「発話」の過程により、空気の振動であれ、書かれた文章であれ、メールであれ、変換された物理的な存在として「文章」という意味ネットワークのかけらが漂っていき、相手にたどりつく。ここでの発話者と受話者の関係は、別のレイヤーでとらえれば社会的なリンクであるといっていいだろう。

そして、「2.Understanding」という段階において物理的な存在(media)から脳内のネットワーク表現へと逆変換(decode化)されれば、相手側の脳内表現ネットワークにこの漂ってきた意味ネットワークのかけらがとりこまれる。これをもって理解ととらえたい。

そして、「3.Response」において逆に自分の表現としてとりこまれた意味ネットワークを発話しなおす、あるいは、自分のもつ付加的な情報やネットワーク構造体の変換を経て違う物理的な形態をもって発話される。このこうした発話、受話、そして確認という過程をくりかえして会話がなりたっていき、2人の間で意味をもったネットワークの相似構造が伝わっていく。

ここで注意を喚起しておきたいのは、この2人の会話で同じ「a red apple」という表現を行っていたとしても、必ずしもそれぞれの「内側」における表現が同じであるという保証はどこにもない。確認のプロセスを経ても、内側の構造体における表現は必ず同じということを保証しない。あるのは会話において操作的に確認可能であるという確信だけだ。内側にはそのときの会話で確認しうる程度のネットワーク的な相似性があるにすぎない。

次のレイヤーに進むと見えてくるのが、こうした会話のプロセスの集合体としての社会的なネットワークだ。上図の色のついた丸は、一人の人間、ノードを示す。下の各二等辺三角形は、各人の知識・信念の状態を示していて、言葉でやりとりしてる部分はごくごく限られた部分に過ぎないということを現すために三角形で書いた。また、黒い点線は明確に共有されている知識・信念構造と共有されていない知識・信念構造の区別を示す。この点線より上の部分がこの6つのノードにより構成される社会ネットワークにおいて共有されている知識・信念だとする。

直感的に理解可能であると思うが、この点線から上の部分が大きくなればなるほど、文章が伝わりやすくなる。冗長性の低い文章でも「会話」可能になる。いま現在のインターネットをツールとして捉えれば、一般的にはこの点線をかなり下に下げる作用をもっているように思う。このプレゼンをしたときにも、まるでお天気の話をするように切込隊長さんの受難の話をしていた(うわ、その後しゃれにならない展開をしていたんだ!びっくり!)。ネットワークの形態がもたらす影響とともに、ごく具体的にネットワークにおいて知識が伝播してく過程と知識・信念の共有というのは密接な関係にある。あるいは、ラジオのノイズと音声のえりわけのようにより効率的で冗長性の少ない情報伝播が可能になるといってもいいかもしれない。

  • 信号検出理論 by 杉森絵里子さん

  • 量子信号検出理論 by 大崎正雄さん
  • さて、ここまで来て私は、ずいぶん以前の「麗しい澤」という問題がぜんぜん進展していないということに気がついた。つまり、どのレベルにおいてもなぜ強い紐帯が強いのか、なぜべき乗則のような集中化が生じるのかという疑問は、半年もたつというのにまったく触れていない。バラバシは、これを常にノードとリンクが生成されていくところに見出したように思う。生成するときに働く力がひとつのポイントだと感じる。

    あー、ぜんぜんわかりやすくねーでやんの。反省してしまふ。

    ■注

    *1

    なんて書いていて、ゴールドマインさんの記事を確認しにいったら、MNOさんがすごい記事が紹介してくださっていた。

    Small World 構造に基づく文書からのキーワード抽出 by 松尾豊さん、大澤幸生さん、石塚満さん

    まあ、これは論文のキーワードをネットワークとしてとらえるとsmall world的な手法で効率よく検索できるよ、という問題を扱っておられるようだから、脳内の言語表現がネットワーク化されているかどうかという話題では全くないが、共時性を味あわせていただく。

    ■参照リンク
    意味ネットワークについて by 新山佑介さん
    今日の物事の働きが気に入らなければ、システムを変えろ。 by さかまたさん
    創発民主制 by 伊藤穰一さん (翻訳:公文俊平さん)
    「インターネット利用者は5年で挙動が似てくる」って本当? by riroさん
    The Moment of AHA! (HPO:Blogdrive)

    あすへの話題 ニュートンの「アハ!」体験 by 茂木健一郎さん

    ■追記 平成17年1月24日

    まだ考察はあいかわらず進んでいないが、どうも全体的な状況が変化しようとする接点に発話やコミュニケーションがあるということをいいたいらしいと気がついた。特に脳内のプロセスというよりも、人と人とのネットワークにおいて「つながる」瞬間はどういう瞬間なのか、どういう力が働いているのか、また「つながり」がどのような力を持つのかに興味がある。

    昨晩、某所でソーシャル・キャピタルについて書くと宣言してしまったこともあり、この辺をからめながら先へ進めたい。そうそう、Hiroetteさんからいただいたloopというキーワードもまだ未消化でいるのもなんとかしたい。

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    コメント

    なんとなくネットワーク論っぽい記事を書きましたので、トラックバックします。私はバラバシもなにも分かってませんが、私の知能のレベルで理解したレベルのネットワーク論と言うとこんなものです(笑)

    ノードっていうのは最近やっと感覚的に分かってきました(笑)

    投稿: Hiroette | 2004年12月30日 (木) 19時44分

    そっか!ループなんだ!

    もしかすると、それこそが凝集する力なのかもしれません。なんかひらめきました。ありがとうございます!

    投稿: ひでき | 2004年12月31日 (金) 21時23分

    TBありがとうございます。
    エントリを読ませて頂きましたが、こんなすばらしい記事に、
    私の記事がリンクされていて、本当にいいのでしょうか(汗)

    投稿: riro | 2005年1月12日 (水) 01時01分

    riroさん、ごぶさたしております、こんばんわ、

    5年とは考えませんでしたが、ネットにつながっている方と次第に共通の前提を共有している気がしてきていました。リアルでお会いするといきなり用件に入れたりします。なんというか、前提が一緒だとおもって核心に入れるように思います。これはかなり大事なことだと思っていたのですが、うまく言語化できなかったところへ、riroさんの非常に適切な記事を読ませていただいて感動してしまいました。

    私にまさしくピタッときました(笑)。

    投稿: ひでき | 2005年1月13日 (木) 23時00分

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