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2005年8月14日 (日)

ロングテイルと有限性 our mortality

梅田さんが、アマゾンの売上ランク10万位以下の商品の売上が、総売上の57%を占めるというロングテイルが話題になるきっかけになった情報が間違っていた可能性が高いということをレポートしていらっしゃっる。

ロングテール論の修正と「AmazonとGoogleの違い」 by 梅田望夫さん

そして、アマゾンが扱っているのが有限の商品数で、グーグルは無限の商品数を対象としているということが重要だと書かれている。

でも「まだ何者でもない」不特定多数「無限大」にまで対象を広げて「新しい音楽を生み出そうという試み」こそが、ロングテールの裾野を広げ、より大きな可能性を拓くのである。インターネットはそういう方向に進化しているのである。それが僕が「ウェブ社会[本当の大変化]はこれから始まる」はこれから始まる」のなかで「総表現社会」がこれから到来するのだと指摘したことと全く同じである。

しかし、ロングテイルが商品の売上がべき乗分布することによって生じる現象であるとするなら、少々議論が違うような気がする。ロングテイルという問題の捉え方が、私と梅田さんとで違うのだろうか?結論から先に書いてしまえば、ロングテイルというかなり限られた人しか興味を持たない世界を共有する力を、ネットという手段で持ちえたにせよ、有限の能力しかもたない我々一人一人が有限の個数のアイテムを使っていかに新たな価値を創造するということこそ、私にとっては一番大事なことだ。この点を鮮明にするために、少し手前の問題から考えてみる。

まず、以前書いたロングテイルの記事のために作ったエクセルのシートをつかって、ランク10万位以下の商品売上の修正の問題からトライしてみる。前回100の商品数を仮定し、上位20位から先の商品売上累計が全体の57%を占めるような指数はなにかを計算した。今度は、同じランクから先のロングテイル部分が「20%台後半」になる指数を求めてみる。

エクセルファイル

正確にいえば、これはべき乗則でなくzipf則ということになるのだが、今回の条件で指数は1.35になる。前回のロングテイル部分が57%を占めるという条件の場合の0.8よりは大分大きい。前回の記事で「南平台で働く社長のblog」のusamiさんに刺激を受けて、自分のブログのキーワード毎のアクセスなどを分析した時得られた指数が0.7前後で、0.8に近い数字だった。前回の仮定条件として、ランク10万位というのがアマゾンの取り扱いアイテム数の20%にあたる、ということで計算しているので、この前提からして違うのかもしれないが、今回修正された売上構成というのは私の身の回りにあるzipfよりははるかに上位に集中する形を示しているように思われる。一方、どうも、zipf則とべき乗則の指数の比較が私の中で腑に落ちていないので直接の比較はできないが、自然現象の中で見出されるべき乗分布の場合には、指数が2から3くらいになるケースが多いと聞く。

だれか米国amazonの書籍部門の取り扱い商品数をおしえてくれい!

次にアイテムの数がロングテイルに与える影響を定量化したい。多分に、アクセス可能な対象の広がりというイメージとして梅田さんは「有限」と「無限」という言葉を使ったのだろうと推測しながらも、この問題を定量的に考えれば取り扱い商品数が多いか、少ないかということの売上やロングテイル部分へ与える影響ということになる。ここを示すために、先の100でなく1000の商品数でべき乗分布=ロングテイルしている状態を作ってみた。指数は、1.35と置いた。

上の図で左が100の商品数、右が1000の商品数のグラフとなる。上段のグラフは自然数の軸で、下段は両対数グラフだ。全体のイメージから先に行ってしまえば、べき乗則の特徴である尾っぽの方がだらだらと長く分布していくという特徴は、100の商品数でも、1000の商品数でもかわらないということがわかる。これはべき乗則がスケールフリーであるということだ。どこの部分をとっても漸減している。これはとる部分によって全く形が変わる正規分布などのグラフとは大きな違いだ。ちなみに、正規分布を仮定すればちょっと中心から離れた部分では、ありえないほど小さな出現確率が与えられてしまうので、ロングテイルにはならないということになる。

注目してほしいのは、色をつけた上位20位累計部分の数字だ。100商品数のときの上位20位の部分で85.34%、1000商品数でも76.97%になる。前者では構成商品数の中で上位20%であり、後者では2%である。取り扱い商品は900も増えていることになる。それにもかかわらず、上位20位までの売上構成比は8%程度しか変わらない。2%で77%をあげるのなら、20%ならもっとはるかに大きな構成比になってもいいと普通想像される。ところが、べき乗則、ロングテイルの世界では違う。

8%を大きいとみるか、小さいと見るかであるが、商売をする側からすれば100の商品数しか扱わないのか、1000の商品数なのかでは、ほぼどの商売でも手間やコストは違うだろう。ネットの上の商売ですら、100なら手作業でhtml文を書いてハンドルできるかもしれないが、1000だと確実にデーターベース等を導入し、システマチックにとりくまなければなければ扱えない。今は構成比を扱っているので、100の商品数と1000の商品数の商売で売り上げ全体がどれくらい変わるのかは分らない。しかし、コストからみると大幅に違うにもかかわらず、また構成比でいえば20%なのか2%なのかという大きな違いがあっても、上位の20の商品で売り上げの8割方が決まってしまうということに変わりはない。

梅田さんが例として挙げておられる「丸山茂雄の音楽予報」にこう書いてある。

音楽を数量で推し量ることも必要ですが、それは音楽ビジネスの、一面にしか過ぎないでしょう。

なんというか、ネットにつながることは6次の隔たりではないが、その瞬間にネット全体とつながったといっていいと想う。そこでどうマーケティングして、アクセスを増やし、売上を上げるかというのは、個々の商売のセンスの問題に直結してくる。確かに取り扱い商品数はマーケティング的に大きな大きな問題ではあるが、それでも真に私にとって問題なのは、有限の能力しかもたない私がネットの上で何かを作り出そうとする、あるいはリアルで商売をしようとするときに、私が無限のリンクか無限の商品数を持っているかいないかが大事なのではなく、有限の能力と有限の商品数の中でなにをすれば商売になるか、価値を作り出せるかということではないだろうか。例示されているアマゾンとグーグルで言えば、力技ですべてを解こうとしているグーグルよりも、ひとつひとつの商品を大事に扱おうとしているアマゾンの方が商売としてはるかにまっとうであると私は信じる。

最後に、梅田さんが「ロングテールから上がる売上や利益はまったく新しく付け加えられるものだ」と主張されていることは、私にはコストの問題であり、余剰生産力、余剰能力の活用という問題ではないかという感じがする。この辺は、「ザ・ゴール」とかに詳しい話があったように想う。

4478420408ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
エリヤフ ゴールドラット 三本木 亮
ダイヤモンド社 2001-05-18

by G-Tools

■参照リンク
[ニュース]ロングテールから上がる売上や利益はまったく新しく付け加えられるものだ by kawasakiさん : やはり、余剰の企業能力の活用という観点だと思われる。
The 80/20 Rule Revisited by Chris Andersonさん :自分でアマゾンの商売は、80:20の法則的な集中であるとみとめているように思われる。そして、問題は商売の利益構成の問題だと。やはり、それはロングテイルと名づけるよりもコスト、余剰取り扱い能力の問題である、と。そして、アマゾンが利益を得るなかでロングテイル部分を扱う出版社や出品者のコスト構造がどうなっているのかを問題にしていないところが問題。
・グーグルとアマゾンの「商品」の違い by palさん

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コメント

私のブログへのコメントありがとうございました。

「ひとつひとつの商品を大事に扱おうとしているアマゾンの方が商売としてはるかにまっとうである」という部分は非常に同感です。
いろんな会社のサイト作りを手伝ったり、自分でブログを書いたりしていて感じるのは、ひとつひとつの商品(あるいはコンテンツ)を大事に扱い、かつ、ネットにつながっていることの利点を意識していれば、アマゾンほどではないにせよ、テールはある程度、自然についてくるということかなと感じてます。

投稿: gitanez | 2006年8月18日 (金) 11時07分

gitanezさん、こんにちは、

ありがとうございます。

人がいうほどネットも、リアルも変わらないのだと感じています。

やはり、大事にすべきなのはリンク=絆なのだな、と。

投稿: ひでき | 2006年8月18日 (金) 11時40分

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ロングテイルと有限性 our mortality また、ひできさんの記事に触発された書いた記事です。 まず、上記の記事をお読みいただいてから お読み頂けると助かります。 例示されているアマゾンとグーグルで言えば、力技ですべてを解こうとしているグーグルよりも、ひとつひとつ..... [続きを読む]

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