衆愚的ということ、カオス的ということ democracy and chaos
カウフマンの政治体性の進化についての章に入りつつある。世の中は投票結果をまっている。その前に自分でこんなかなと思うことを少々書いておくのは有意義なことであろう。
自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法測 スチュアート カウフマン Stuart Kauffman 米沢 富美子 日本経済新聞社 1999-09 by G-Tools |
NKモデルから予測されるのは、社会が成熟化の過程を迎え、リンクの密度があがればあがるほど線形的には予測しがたいダイナミクスが生じやすくなると言うことだ。つまり、従来的な意味での論理と知識の積み重ねでは社会の今後を予測することはできなくなる。まあ、これはネットワーク理論を持ち出すまでもなく、自分と同じ程度の知性のやつなんて電車で隣合わせになるくらいくさるほどいるわけだし、自分が先を予測するのと同様、その同程度かそれ以上の知性も予測を行い、行動を開始するわけだから、私ごときが全体についてうんうんするということはおこがましいとしかいえないことではある。
そして、SYNCを持ち出すまでもなく、経済物理学を引合に出すまでもなく、貨幣の生成と崩壊を持ち出すまでもなく、多過ぎるプレーヤーというのは、ますますカオスの状態を引き起こし、線形の予測がつきにくさの度合を増すことになる。現象面から言えば、ベキ乘則の波への展開といえる1/fのように、社会の振幅がはげしくなるということだ。これは現在の買わせ相場を見てもらえば、わかりやすいだろう。つまり、人は集まれば集まるほど、リンクの密度があがればあがるほど、集合的な知性というよりは、集合的な愚になっていくということだ。
これを従来型の線形な知性の力業で乗り切ろうとすればなにができるか?たぶん、どのレイヤーをとるかを選択してNとして扱えるプレーヤーの数を減らすことだと想う。極端なことを言えば、二元論的対立に持ち込むことだ。Nのプレーヤーの差異が大きな変動要因にならないほど大きな違いが明らかになるレイヤーを選択し、分散力の大きな因子を振りかざし、むこうの岸とこちらの岸にわけてしまうことだ。
たぶん、小泉さんが今回の選挙で採用した戦略はここにあるのではないだろうと私は感じている。因子分析の言葉で説明すれば「郵政民営化」という非常に分散が大きな問題を設定したため、それ以外の問題の分散の大きさは相対的に無視できる程度になってしまっていると言うことだ。ここが、これまで権威をもっていたかもしれない線形の知性たちと線形なイデオロギーが無力化されてしまったと言う現象なのではないだろうか?そうそう、たしかくりこみ理論かなにかでモデル構成が一旦決まるとパラメーターの大きさによる差異というのは無視できるような構造が非線型な場合にみられると読んだような気がする。あ、あとでちゃんと調べます。。。
ま、一言でいえば小泉さんは当代まれなる度胸の座った博打打ちだと言うことだ。
■参照リンク
・ブログをリアルで語る (HPO)
・人は変われないのか? (HPO)
・二〇〇五年衆院選挙結果 by finalventさん
・[社会]自民が圧勝した理由はなんなんだ? by Dojinさん なるほど。一番納得しました。
■追記 翌16:11
finalventさんの論を読ませていただいた。ふーん、とうなっている。
それでも、今回の選挙がかなりシステム的なものからくるカスケード(雪崩)的現象であったようにまだ想っている。上述のようにNKモデルにおいて、ノードの状態を1か0の状態であらわされるN次元空間では、砂山がどどどっとくずれるよなカスケード現象がみられるという。どうもこの辺のシステム的な性質が今回の選挙で働いたような気がする。
一方、NKモデルでリンクが多すぎる場合や、非線形式で表される結果としてのカオスの状態では、パラメーターの初期値でまったく結果が変わってしまう性質が観察されるのだという。従前の中選挙区をモデル化しようとするとこうしたカオス状態のモデルに近いのではないだろうか?そして、あえて初期パラメータの影響が大きいという状態において一部の発言や、一部の思想が影響を大きく及ぼすことができるが、今回のような状態だと相転移的なグラフになりやすいと推測できるかもしれない。
いずれにせよ、選挙を非線形現象としてモデル化することは、↑の相撲モデルのように可能ではないだろうか?
いや、書いていて選挙は選挙として受け入れるべきかなという気もしてきた。仮に本当に小選挙区制度にシステマティックな性質があったとしても、小泉さんがそれを理解していたかどうかは、finalventさんが指摘しているようにはなはだ疑わしい。
ま、やはり小泉さんは稀代の博打打ちだということが本稿の結論であるということには変わりがない。
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