考えるより行動する、行動するより楽しむことが強い laws of self organization
ある人が「考えているやるよりも行動するやつが強い、行動するやつよりも楽しむやつが強い」と言った。カウフマンにはまっている私としては、この言葉に感じるものがあった。
「楽しむ」ということはカウフマンの言う自己触媒的な作用だということであり、儒教の言うところの「礼楽」であり、時間的な展開で言えば音楽ということなのではないか。
考えること、想うことの相互強化的なプロセスについてはともかく、行動することの大事さについては私も日々実感している。まして、行動することが楽しくなると行動が強化されるということは、行動自体が行動によって強化されるということだ。うまく言えないのだが、「楽しい」というのは、心理学の行動主義でいうところの利益を得るとか、快楽を得るといった単純なものではないように感じる。マウスに与えられるエサなどという行動の「報酬」の強化作用ではなく、行動すること自体を楽しむことは、自己触媒反応と言えるのではないだろうか。
・自己組織化&自己集合 - アニマル柄とチューリング・パターン by NANOELECTRONICS.JP
分子レベルと人の行動のレベルを単純に比較することはできないと分かっていながらも、大きな分子が自分で自分を触媒し、長くなったりつなぎ変えをしたりしながら、複雑をますます増していくという自己触媒反応のように、人の行動はさまざまな縁を生み、縁が楽しみをまし、より大きな行動を作っていくように感じられてならない。
この行動は、私に儒教でいう「礼楽」を思い出させる。儒教では「礼」とは秩序のことだ。儒教は如何に個人レベルで、国家レベルで秩序を保つかという学問であると私は想っている。しかし、どれだけ強調しても「秩序」だけでは秩序が保てない。厳格すぎる体制下では人が生きていけない。しかし、そこに楽があれば、礼という秩序を補完し、強化し、生き延びさせていくことができる。これは、固定的なものと命あるものとの比較でも同じことがいえまいか?国家体制を建物になぞらえることがあるが、実は堅固な建物であっても人間より長生きすることはまれだ。少なくとも、メンテナンスのない建物の寿命というのは案外短い。実は人の命の方が建物よりも長いというのは、自己組織化的だということであり、生きるという行動があり、「楽」があるからだと想う。
・『中国の伝統美学』 @ 松岡正剛の千夜千冊
儒教の祖である孔子は、音楽を好んだという。音楽というのは、「音」の「楽」だ。単体の音でなく、連なる、重なり合う音が、「音楽」になる。音楽とは、「楽」を音で時間的にあらわしたものなのではないだろうか?単純なひとつの音が次々とつらなることにより次の音、その次の音と相互作用を生んで、メロディーになっていく。ハーモニーは、音と音との楽に違いない。互いに相互作用し、互いに生かしあい、互いに強化していくものだ。考えてみれば、音楽ほど、「礼楽」という秩序と自己組織的、自己触媒的な生成の力を人にわかりやすく表現したメディアはないのかもしれない。
デムパというそしりを恐れずもっと言ってしまえば、言葉と行動の関係と、分子レベルでの生物発生における遺伝子と生体の発生の関係は並行的なのだと想う。遺伝子が分子の密度を制御し、分子の密度がどの遺伝子のスイッチが入るかを決めることにより、ホメオボックスにそって身体が形成されていくという美しさを、行動と言葉に感じる。言葉は明確な行動を志向する。明確な行動につながらない言葉は言葉ではない。そして、言葉を行動することにより、また新たな言葉が生まれる。行動だけをひたすらやりつづければ、それは言葉に結晶化さざるを得ないのだと想う。そして、その言葉がより行動の本質を示し、行動を純化、強化、多様化させていくように私は想う。
・分子発生学はネットワークの夢を見るか? (HPO)
そう、そんなことを感じた。
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コメント
ひできさん、お久しぶりです!あることがきっかけで文章を書く気が起きました。「6次の隔たり」という言葉を思い出し『世の中狭い』という記事にトラックバックさせていただきました。記事の内容との関連は薄いのですが、ただ「6次の隔たり」という言葉を思い出したものでそうさせていただきました。
それから、トラックバックした記事のタイトルは、この記事の「分子発生学はネットワークの夢を見るか?」を見て思いつきました。「電気羊はアンドロイドの夢を見るのか」ですね^_^;
チラッとblog読ませていただきました。相変わらずの格調の高い文章!恐れ入ります。でも結構私好みのワードがたくさんあって楽しいです。もう少し頭が冴えてきたらもっとじっくり読みたいです。では。
投稿: it1127の日記 | 2005年10月18日 (火) 17時28分
it1127さん、こんばんは、
いやぁ!おひさです!うれしいです!
記事読ませていただきました。そういう出会いってでも楽しいですよね。最近、本当に人との出会いと絆を深めることがなにより楽しいと感じます。でも、その分ブログの記事を書く量と内容の深まりは圧倒的に低下傾向にあり、あせる気持ちがちょっとと、「ま、いっか」と開き直るのが五分と、リアルであっぷあっぷしている自分が一分くらいな感じの微妙なバランスです。
投稿: ひでき | 2005年10月19日 (水) 21時56分