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2006年3月21日 (火)

生産性とはなにか? let me hear your body talk

クルーグマン先生の本を読んでから、とても気分がいい。少し前からひっかかっている生産性の問題についてもヒントが満載だった。

まず、生産性の問題がどれくらい重要か?クルーグマン先生はこうおっしゃっている。

仮に楽観論者が正しかったとしようか。アメリカの生産性がこれからの10年で、過去15年よりずっと速く上昇したとするーーーそうだな、年率3%とかで。そうしたら経済はどうなるだろうか?
答え・・・この本で議論してきた問題の多く(全部じゃないよ)はあっさり消えちゃう。

この話の前には、人々の実感と生産性の拡大が直結していないみたいだし、直結していていない理由も現代の経済学者はうまく説明できていないという議論がある。そして、「議論してきた問題」には、当時のアメリカが抱えていて、今は別の国が直面している年金、医療、所得分配、経済格差そして財政赤字や貿易の問題が含まれている。

では、この魔法の指標、生産性とはなにか?鈴木健さんの定義を引用させていただく。

生産性とは、財から財を生み出す変換効率です。A財(投入)からB財(産出)が生まれるときに、B財の量(産出量)/A財の量(投入量)が生産性になります(定義によってはこの逆数になります)。財は労働である場合もあるし、材料であったり、貨幣であったりすることもあります。

ま、多分、クルーグマン先生の言う生産性は、労働者一人あたりの産出をどれだけ増やせれるかということに焦点を置いているんだろうけどね。鈴木健さんの議論は、ものすごくおもしろいし、いまの世の中を生産性という観点から考える上でとても重要なポイントを含んでいる。

そして、今日ここで書きたいと思ったのは、お金を増やすこと自体は生産性を増やすことではないということだ。山形浩生さんは、株式公開でも、社債発行でも、銀行の借り入れでも、友達からの借金でも、なんでも単なるファイナンスという行為自体は大した意味はないと書いていらっしゃる。

便乗してどんどん脱線しちゃおう。いま書いたようなことなんて、たぶん徐々にみんなわかってくると思うのね。だから、そのうち今ある証券業界とか、ファイナンス業界とか、どんどん不要になって衰退してくと思う。消えることはないだろうけど(クリーニング屋と同じで、自分でできることを代行してくれる業者はそれなりにありがたいから)、今ほどメジャーではいられないんじゃないかな。
クルーグマンも同じことを考えていて、インベストメントバンカーなんて仕事こそ今後どんどんコンピューター化されて消えてたっていい、と言っている。金利とか収益率とか見て、差のあるところを探して適当にアービトラージするだけなんだもん。大した人工知能もいらないよ。もし金融市場を本格的に規制緩和してったら、たぶんそういう可能性もあるはずなんだ。

「いま書いたこと」を知りたければ、ちゃんと本を買って読んで欲しい。千円だしてもおつりがくる金額で、あなたの将来を変えてしまうかも知れないヒントが得られるかもしれない。私にとっては、自分の商売を考えるチャンスをクルーグマン先生がくれたので、多分数千万単位の価値があったんじゃないかな、マジで。

インベストメントバンカーが必要でないなら、いわんやヴェンチャー企業の株式公開やデイトレーディングをや、という気が私はする。実際、本当に大きなお金が事業継続の上で必要なヴェンチャーって一体いくつあるんだろう?昨日、NHKで堀江貴文さんの7、8年前のインタビュー映像を流していたけど、堀江さん本人が「ヴェンチャー企業で、仕事を進めていく上で大してお金はいらない。」と語っていた。

あとがきにでくる「知的な仕事なんてコンピューターでもじゅうぶんにできる。人間にしかできない仕事ってのは、実は掃除とかメンテナンスとかの肉体労働的な雑用だ!」というクルーグマンの話は、衝撃的だし、そういえばドラッカーが執拗に新しいナレッジワーカーのモデルとして、手術に臨む医療チームや、随分昔の電話線のメンテナンス技術者であったことを連想させる。

実は、価値を本当につくり出しているのは、これらの人々なのだ。ちょっと会社経営にかかわることがあればわかるけど、お金を集めること自体はそんなに難しいことではない。金利や配当さえちゃんと出していれば集まって来る。でも、自分で稼がないといつかは元金を返済しなけれないかないとか、株価があがらないといって株主から解任動議を起こされる日がくる。

やはり生産性なのだ。いかに自分自身が価値をつくり出すかということこそが、経済を動かすのだ。ソフトバンクだって、私はボーダフォンを買収することよりも、駅前で地道にADSL回線を売ったことの方が価値をつくり出していたのではないかと思っている。

ま、そんなわけだ。だから、コンピューターの前に座ってばかりいるのではなく、いまからちゃんとワークアウトして、来るべき労働の復権の時代にそなえるべきなのかもしれない。

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コメント

>金利とか収益率とか見て、差のあるところを探して適当にアービトラージするだけ

金融の本質ってここでしょうね。ただ収益率の予想にリスクがあるので、そこが腕の見せ所って感じでしょうか。

投稿: ひろ | 2006年3月21日 (火) 22時04分

ひろさん、はじめまして、

コメントありがとうございます。

さすがクルーグマン先生の言葉だと私も思いました。

金融機関の内部の収益はわかりませんが、レベレッジしていないグロスのパフォーマンスって株式以上全体の平均の利回りよりも低いという統計がどっかにあったように思います。

投稿: ひでき | 2006年3月21日 (火) 22時14分

人間に残るのは別の部分だろうと思っているのですが、それはまた別の機会に。

投稿: SW | 2006年3月22日 (水) 02時21分

SWさん、おはようございます、

そうですよね、なによりシステム自体を作るのは人間側の問題でなければならないわけですし、経済的な価値観だけではない多様性の世界は人当分の間人間の独断場だと思います。

そうそう、なによりイノベーションとか人間の問題ですよね(笑)。

投稿: ひでき | 2006年3月22日 (水) 09時55分

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