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2006年3月22日 (水)

自殺のティッピングポイント My Lost Marbles

4870313944ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか
マルコム グラッドウェル Malcolm Gladwell 高橋 啓
飛鳥新社 2000-02

by G-Tools

いやぁ、なんかこうやってこの本の表紙をみるだけでなつかしいな。ちょっと前にこの本の想い出について書いた。あ、最初に書いたときから多少変えているよ。

私に「ティッピングポイント」をくれた方のことを思い出した。「この本は、きっとひできさんの将来を変えると思う」といってプレゼントしてくれた。もう会うこともなくなってしまったが、いま思うと確かに(べき分布的な現象やらネットワークの力の一端について書かれた)この本から出発した考え方が私の人生を変えつつあるのかもしれない。「SYNC」のラストで「ティッピングポイント」が模索した回答の一端が示されたときには戦慄した。

この本の中で、ミクロネシアの少年たちに起こった自殺の流行の話が議論されていた。今の私の疑問というのは、第3次自殺ブームといわれる昨今、話題になっているネットからみの自殺事件が果てしてこのティッピングポイント現象なのかということだ。あ、ちなみにティッピングポイントというのは、ある一定の数を超えて伝染病やら、ファッションやら、うわさ話などが伝わるとき、どこかで爆発的に全体に広がるポイントがあるという考え方だ。いわゆるパーコレーションの問題だね。パーコレーションについて詳しくは、↓を見てね。

ミュージカルバトン (HPO)

時間がないので、手短に言うとごく限られた部分では自殺のティッピングポイント、パーコレーションが発生している可能性がある。でも、それ以外では想定の範囲内らしい。

日本における自殺の精密分析 by 池田一夫さん、伊藤弘一さん @ 東京都立衛生研究所年報,50巻,337-344 (1999)

自殺の多くが中高年以上の男性だということを知ってた?

そもそも日本の男性は、女性の倍くらい自殺しちゃうんだよね。んで、昨今の自殺の多くは団塊の世代の方々が50代から60代という魔の世代に到達したために起こっている可能性が高いらしいんだな。あと、1930年代前半、いわゆる昭和一桁世代に第1次、第2次、第3次の自殺ブームを通じて、自殺の率が高いという現象もあるらしい。この年代の人達ってロマン主義者というか、とっても「熱い」人達が多いからね。なんとなく有名人の名前も浮かぶが書かないでおく。

そこんとこをわかってもらって上で、↑の論文の都内と全国平均を比べた図5と図6を見て欲しい。分かりにくいかもしれないが、色分けされたセルの縦の列が暦年を示している。一番右側の列が1995~98年だね。そして、縦に15歳から90歳まで15歳きざみで示したセルが並んでいるというわけだ。紫や赤が平均より高いといことなのだが、どうも有意に高そうなのが、90年代に入ってからの15歳を超えた青年期の女性たちだ。この論文にも書いてある。

女子の死亡率比の世代マップを図6に示す.女子で特徴的なのが,60歳以上の高齢域で顕著に死亡率比が低いのに対し,青年期から中年前期にかけて,死亡率比の高い区域が終始存在することである.特に,1980年代以降,死亡率比1.1を越えるセルが青年期で増加し,1995-97年では20-50歳代のすべてのセルが1.1を越える状況になっている.青年期で死亡率比が高く,高齢域で死亡率比が低いという現象は,東京以外にも,大都市を抱える大阪府と福岡県,さらに沖縄県でも観測される.この点から,都市部における青年期女子の高い死亡率比については,社会心理学的な考察の対象とすべき現象と考えられる

これだけでパーコレーションが起こっているとは結論づけられないけど、逆を言えばここの部分以外は現代に特有の現象ではなくて、いままでの第1次、第2次のブームの延長線上らしい。ネットが自殺増加の原因だとニュースなどでよく書かれているけど、「都市部における青年期女子」以外の部分について本当にそうなのかこのデータを見る限り疑問だな。

あ、ちなみに軽く書いてしまっているけど、現代に至っても自殺の原因の多くは精神的な悩みなどよりも病気を苦にした自殺なのだそうだ。米国や英国とかと比べて自殺の数が少ないのは、もしかすると尊厳死とか、クオリティー・オブ・ライフを医療でどう考えるのか、痛み止めをどのタイミングで投与するのかとかいう違いなのかもしれない。

ちなみに、自殺についてのもうすこし文化的な考察としては、この方のブログ記事が興味深かった。

自殺は感染する by 雨崎良未さん

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