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ノンリコースローンってなに?

先日の住宅と賃貸と所有の比較において触れたノンリコースローンについて、説明が足りなかった気がするので、すこし書きます。「亡国マンション」の説明が分かりやすいので引用させていただきます。

リコースローンとは、「遡及型ローン」といわれるもので、ローンの借り手が作務履行できなくなったとき融資資金の償還請求権がその個人の持つ全ての資産に及ぶものだ。単純にお金を貸すという金銭消費貸借契約だから、土地を売っても足りない分は残りの全資産で賄えということだ。

一方、ノンリコースローンとはモゲージ(担保)ローンと呼ばれ、担保にとった不動産にしか及ばない。土地を手放すだけでお咎めなしということだ。アメリカではモゲージローンが多く行われているが、日本ではほとんど行われていない。

良いことづくめに聞こえますが、ソフトバンクのボーダフォンの買収で孫さんがシンジケートローンのリスクを説明したように、ノンリコースローンでも、エクイティーとか、ダウンペイメントとか言われる頭金相当部分は、もしローンが返せなくなったら当然ですが放棄することになります。貸し手の金融機関は頭金相当部分を引いた金額で土地・建物を取得して、なんらかの形で処分することにより元金を回収するわけですから、一般的に言って審査も厳しくなりますし、金利も高くなります。

しかし、住宅をスケルトン・インフィルにわけ、維持修繕にインセンティブを持たせることにより、あまり条件が厳しくならないようにする住宅のノンリコースローンを研究している会社さんもあるようです。

住宅ローンのノンリコース化に関する提言 (PDF) by 新井明さん @ NTTデータ研究所

はやくこういう制度が普及して、住宅ローンによる悲劇が少なくなり、敗者復活が計られるようになり、社会全体としてよい方向に向かうとよいと思います。

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[書評]建築構造のわかる本

4395004075建築構造のわかる本
大成建設建築構造わかる会
彰国社 1993-06

by G-Tools

とてもすばらしい本です。

建築構造の再勉強をはじめて、最近つくづく感じるのは、建築の一番の基本は骨組みである構造にあるということです。構造次第で建築物は実にさまざまな表現、さまざまな機能を獲得することができます。その事実を本書は非常にわかりやすく伝えてくれています。近年、内装のデザインや、付加的な機能である設備などが建物を評価する基準として重要視されていて、それはそれで現代において大事だと思うのですが、工学としての建築の本質は構造にあるのだと実感します。

建築の設計から施行、竣工までの流れ、そして、構造の基本的な考え方を写真やイラストを多用して解説してくれています。構造とは、建物を通してどのように力が伝わっていくか、それをどう受け止めてあげるかなのだということが読み進むほどに分かってきます。そして、「世界のマジックショー」と題した章では、シアーズタワーや、上海香港銀行、ドーム球場、新凱旋門などの世界の有名建築物がいかに力を使える構造体を見えやすくしているか、マジックのタネを仕込んでいるかを写真で教えてくれています。

 
(鹿島さんの「建設博物 超高層」より)

できれば、最低限この本で書かれているレベルのことと、木造で同様のレベルの本があれば日本全国の高校生に授業で教えるべきだと思います。繰言のようですが、耐震偽装の事件にしろ、あまりにも業界側と一般の方との知識、考え方に差があることが遠因であるように思えてなりません。建築に興味を持っている方、マンションを買おうとしている方は、遠回りなようでも本書のようなごく基本から勉強されるべきではないでしょうか?本書にもバイアスはかかっていますが、最近出る建築関係の本よりははるかに少ないです。

この本を読んで、自分が小さい頃に「超高層のあけぼの」という本を読んで、技術の限界に挑む建築に興味を持ったことを思い出しました。ああ、本当に自分は構造から建築の世界にあこがれたのだなと実感しました。

同名の映画もありますが、あらすじを読む限りかなり内容は違うように思います。

超高層のあけぼの(1969) @ goo映画

本の方は、エレベーターコアの話とか、五重塔の柔構造の話とか、子どもにもわかりやすく工学的な叡智の発揮を解説してくださったいたように私の記憶には残っています。なつかしいです。

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限界耐力計算ってなんだろう?

ここのところ構造計算が一般紙の一面でも解説されるようになりました。本日も興味深い記事がありました。」

新宿の姉歯物件、強度不足が一転「安全」 新構造計算で @ asahi.com

姉歯案件ですので、「偽装」があった時点で厳しい評価を受けるということは当然ですし、偽装を行ってしまったと言うことは社会的懲罰を受けなければならない行為です。しかし、再再計算をしてみて必要な耐力があったということは驚きです。多分、ここでいっている耐力とは例の構造計算における許容応力度計算において、各階の保有水平耐力を必要保有推定耐力で割った数字の最小値を言っていると思われます(Qu/Qun)。それでは、再再計算に使われたという限界耐力計算というのはなんでしょうか?

私の記憶がただしければ、そもそも新耐震導入の頃には、現在用いられている二次計算、崩壊メカニズム時における許容応力度計算が「限界耐力計算」と呼ばれていたはずです(あまり自信がありません。間違っていたらご指摘ください。)。現在の「限界耐力計算」は、2000年の建築基準法の改正以降で採り入れられたと聞いております。この計算方法はかなり難易度が高く、「非線型」なプロセスをも含むためPCを使って以外は計算できないだろうと思われます。それでも、根っこの部分はそれほど変わらないはずですから、新しく設計する建物ならともかく、同じ構造物に対して構造計算を行った場合、そんなに大きな違いがでるのでしょうか?

限界耐力計算の解説のすばらしいサイトを見つけましたので、ぜひ御一読下さい。難易度はかなり高いです。これまで構造計算になじみの薄い方は、参考書を読まれてから印刷して読む位でちょうどよいでしょう。

「限界耐力計算ってなんだろう?」株式会社 ストラクチャー

読んでみて、結構びっくりしたのは、法文で定められている条件としてはこれまでの許容応力度等計算とあまり変わらないのだというくだりです。


これを見ればわかるとおり、限界耐力計算法が従来の許容応力度計算法と違っているのは、全 7 項目のうちの 3 項目にしか過ぎません。
しかもそのうちの積雪・暴風にかんするもの(項目 2 )は、従来の荷重を割り増して終局耐力(許容耐力)内にあることを確認する、というものですから、本質的には従来の計算法の延長であり、とくに手法として目新しいものではありません。

計算方法自体も外力の作用の仕方の定義の違い以外には、あまり違いが私には理解できませんでした。出てくる数値も、複雑な計算を経ているとはいえ、要は水平保有耐力だということになるようです。私の理解力が不足しているので、なぜ再再計算で数字が違って来たのかよくわかりません。

しかし、この解説以上に面白かったのはこのエッセーです。うんうん、うなずきながら読んでしまいました。震度と構造計算に使われる水平加速度の関係についてするどくつっこみをいれてらっしゃいます。

震度 5 強で倒壊の恐れあり?株式会社 ストラクチャー

■追記 翌日

限界耐力計算は混乱要因/「2つの標準」も指摘/JSCAが意見書 @ 建設通信新聞

やはり、並立する二つの基準の難しさが出てきているようです。建築基準法を頂点とする法令、通達、指針、基準等の構造の体系はつぎはぎを繰り返し、もはや根本からの改訂を迫られているような気がします。しかし、性能基準をいまさら取り下げることは果たして合理的な政策といえるのでしょうか?

また、保有水平耐力計算の検討結果で、すでに取り壊しの判断を下した建物との整合性を図るのも難しいとした。

記事の最後にこのような話がありましたが、まさかこれは既に取り壊してしまった建物の中にも「限界耐力計算」によってセーフと判断された建物がありうるということでしょうか?もしそうだとすれば、各地の再計算を担当された方々の責任問題につながりかねないことになります。

ちなみに、昨晩たまたまニュース番組を見ていたら、コンクリート強度が設計よりも大分大きくなっているので再再計算でQu/Qunが大分大きくなったという報道をしていました。施行時の補正と温度補正があれば、3~6ニュートンくらい大きく打設するのはあまりにあたりまえの話だとのけぞってしまいました。ま、本来「設計外の余力」といわれるべき性能ではあるのでしょう。

■参照リンク
粘り強く耐え続ける建物を造るには 第29回 限界耐力計算の危機 日本地震情報学会

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