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[書評]建築構造のわかる本

4395004075建築構造のわかる本
大成建設建築構造わかる会
彰国社 1993-06

by G-Tools

とてもすばらしい本です。

建築構造の再勉強をはじめて、最近つくづく感じるのは、建築の一番の基本は骨組みである構造にあるということです。構造次第で建築物は実にさまざまな表現、さまざまな機能を獲得することができます。その事実を本書は非常にわかりやすく伝えてくれています。近年、内装のデザインや、付加的な機能である設備などが建物を評価する基準として重要視されていて、それはそれで現代において大事だと思うのですが、工学としての建築の本質は構造にあるのだと実感します。

建築の設計から施行、竣工までの流れ、そして、構造の基本的な考え方を写真やイラストを多用して解説してくれています。構造とは、建物を通してどのように力が伝わっていくか、それをどう受け止めてあげるかなのだということが読み進むほどに分かってきます。そして、「世界のマジックショー」と題した章では、シアーズタワーや、上海香港銀行、ドーム球場、新凱旋門などの世界の有名建築物がいかに力を使える構造体を見えやすくしているか、マジックのタネを仕込んでいるかを写真で教えてくれています。

 
(鹿島さんの「建設博物 超高層」より)

できれば、最低限この本で書かれているレベルのことと、木造で同様のレベルの本があれば日本全国の高校生に授業で教えるべきだと思います。繰言のようですが、耐震偽装の事件にしろ、あまりにも業界側と一般の方との知識、考え方に差があることが遠因であるように思えてなりません。建築に興味を持っている方、マンションを買おうとしている方は、遠回りなようでも本書のようなごく基本から勉強されるべきではないでしょうか?本書にもバイアスはかかっていますが、最近出る建築関係の本よりははるかに少ないです。

この本を読んで、自分が小さい頃に「超高層のあけぼの」という本を読んで、技術の限界に挑む建築に興味を持ったことを思い出しました。ああ、本当に自分は構造から建築の世界にあこがれたのだなと実感しました。

同名の映画もありますが、あらすじを読む限りかなり内容は違うように思います。

超高層のあけぼの(1969) @ goo映画

本の方は、エレベーターコアの話とか、五重塔の柔構造の話とか、子どもにもわかりやすく工学的な叡智の発揮を解説してくださったいたように私の記憶には残っています。なつかしいです。

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

いやーあ、相変わらず熱いですね!
でもこの本、普通の人が読んだら多分
目次で、つまずく様な気がします、片手に
建築用語説明集(こんな本、聞いたことない
けど)でも持って、辞書と首ったけって!

このブログが、プロによる、プロのための、
ものならば、何の問題もないけれど、
「少しでも、素人さんに建築の事を、
 知って欲しい」と思うなら、建築の玄人限定
 の難解な本、いくら役に立っても
 多分一般の人達は、読まないでしょう

※今の、僕らに必要なのは、普通の人と
建築士を結ぶ、通訳ではないでしょうか?
とかく、建築用語(法令を含めて)は、
正確に伝えれば、伝えるほど、長文と
なり、結局為になる話も、聞いてもらえなけ
れば、意味がない!

今僕自身のブログに、木造の制震技術に
ついて、書こうと思うけど、改めてこれまでの
ブログを、読み返してみると、まるで、
構造の教科書みたいで、我ながら参って
います、もっと普通の人達に、真面目な
奴らもいる事を、広く知ってもらいたい、
そう痛切に感じるこの頃です!

投稿: かまぱん | 2006.03.15 01:26 午前

かまぱんさん、こんにちは、

遅レス失礼しました。

あ、いや、この本かなり読みやすいと思いますよ。大成建設さんの有志の方の一般の方にもわかりやすい本をという意気込みが伝わってきます。本当です。オススメです。

同じ有志の方たちが他にも本を出していらっしゃるんですね。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-author=%E5%A4%A7%E6%88%90%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E5%BB%BA%E7%AF%89%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E4%BC%9A/250-4823017-9189009

普通の方に分かってもらうには、やはり高校の授業に組み込んでもらうのがよいのではないでしょうか?普通の構造計算なら、中学校の数学と物理学で理解可能だと思います。

投稿: ひでき | 2006.03.17 11:58 午前

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