[書評]不動産投資の破壊的成功法
正直、やられたな、という感じです。出版された2005年内になぜ私はこの本と出会えなかったのでしょう。
1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法 金森 重樹 ダイヤモンド社 2005-10-28 by G-Tools |
この本に出会って本当の意味での大きな純資産を築かれた方がいらっしゃるというのは実にうなづけます。ちなみに、不動産、建設のプロの間では「資産」とは、貸借対照表上の左側の合計にすぎません。投資とは、貸借対照表の「資本」にあたる「資産」から「負債」を引いた「純資産」(自己資本)をいかに増やすかであって、むやみに「資産」を増やすことで張りません。将来に渡って本当に正味ベースの純資産を築く方法がこの本には書いてあります。
はっきり言って自慢ですが、私は十数年前に勤務先をやめた翌月に米国に留学し2年きっかりで帰ってきました。正確に言えば、1993年6月末で当時勤めていた上場不動産開発会社を辞め、7月13日に渡米し、1995年7月17日にMBAの資格を取って帰国しました。専攻は「都市開発と不動産ファイナンス」です。米国に行っている間は夜も昼もなく勉強しました。会計、マーケティング、ファイナンス、事業計画(entrepreneur)、なんでもとにかくよい成績をとれるよう、また積極的に米国人とディスカッションするようにがんばりました。お陰でPhi-Kappa-Phiという成績優秀者のフラタニティーに入れていただき、いくばくかの奨学金を推薦でいただきました。
その私が言います。
私が死ぬほど努力した2年よりも、使える知識、使える技法がこの本には凝縮されています。
金森さんご自身が書いていらっしゃるように、急速に不動産投資利回りが下がってきている現在、本当に一棟ものの不動産マンション投資は難しくなってきています。私も仕事の上でひしひしとそれを感じます。ついつい地を出してしまえば、だからこそいま投資すべきだといいたくなるのですが、本当に慎重に、かつ、波を読んで投資すべきだと私も思います。また、足元で建設業界のインフレーションとしかいえない現象が起こっているのも実にアゲインストです。
だからこそ出版された時でなく、2年も経ってからこの本と出合ったことが悔しいのです。
しかし、それでも連休が明けたら何人かの投資家希望の方にこの本をリアルで紹介している自分がいると思われます。
ただし、この本に書いてあるのは、私が地域の建設会社として主張していることとは正反対のことが書いてあるのも事実です。実に合理的な不動産投資法なので、「勝ち馬にのる」ことこそがが成功法なのです。収益還元法で銀行がお金を貸してくれるエリアにこそ投資すべきだというのは、本当にその通りなのです。しかし、それではますます地域の格差は開いてしまうのでしょう。この自分のふるさとにこそ住んでいたいという人の好きだという気持ちとか、意地などはどこかにおいておかなければなりません。
その矛盾を正直に私は感じています。
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コメント
勝手にお勧めされてしまった?一人ですw
ひできさんの仰るとおりの内容ですね。この本、アマゾンの書評を読む限り否定的な見解が多数を占めているようです。確かに表面的には成功談や数字に目を奪われがちですが、物件に関する着眼点というか、チェックポイントが非常に深いところにあって、投資手法の一つとして評価する限りはかなり使えるのではないかと思います。
幸いにして?著者のいう「収益還元法エリア」に該当する地域に居住し仕事をしている自分ですが、同じ業界に居る人間として、こういう投資手法が世の中に浸透していき、地域ごとにどんどん投資格差がミクロなレベルで分けられていくと、いままでのようなおおざっぱな提案、極端な話ボリュームさえ出ればあとはやるかやらないかはお客さん次第でしょみたいな話は「あり得ない」世界となり、非常にシビアな提案をこれからしていかざるを得ないのだろうなとおもいます。
さて、そうなったときにひできさんの言う地域格差に対する矛盾を、小手先でなくどうやって解決するのかというのが、これからの中小企業に課せられた命題なんでしょうね。企業の体力とか、まあそういうこともありますが、矛盾であるからこそ解決することが事業につながると思います。出来たらノーベル賞ものですがw
投稿: ぬまっち | 2007.05.15 11:54 午前
ぬまっちさん、こんばんは、
私もこの本が示唆していることは深いと感じています。
特に欧米並みにリフォーム、リノベーションしていくことが当たり前の世の中がすぐそこまで来ている気がします。
ま、逆に言えばますます仕事が増えるということではないでしょうか?
投稿: ひでき | 2007.05.20 09:18 午後