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改正建築基準法ってなに?

去る6月20日から改正建築基準法が施行されました。建築基準法とは、いうまでもなく建築に関わるものの「憲法」で、日本国内で建てられるほとんどの建物の安全などの基準を決めた法律です。最初にこうあります(E-GOV参照)。

(目的)
第一条  この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

今回の改正がどのような改正であったかは、新聞などのマスメディアなどで報道されています。今更私がどうこういうこともありません。


ピアチェックなど耐震偽装問題対応の改正建築基準法が施行に @ asahi.com


建築確認・検査の厳格化、民間確認検査機関に対する指導監督の強化などが主要項目。今回、施行された建築基準法の最大の目玉はピアチェックの導入だ。「構造計算適合性判定制度」という。高さ20メートルを超える鉄筋コンクリート造のマンションなど一定の高さ以上の建築物について、第三者機関の専門家による構造計算書のチェックが実施される。


私が見聞きしている建築関係者の間では、まだあまりインパクトが受け止められていません。正直、まだ様子見という感じなのではないでしょうか?建設会社よりも先にインパクトの来る設計事務所関連では、重く受け止められているようです。


【改正建築基準法】80%が「仕事に大きな影響がある」──緊急アンケートに大きな反響 @ケンプラッツ (日経新聞)


一介の建設屋の社長として言うべきことでないのかもしれませんが、私が疑問を感じているのは、木造住宅に関して罰則の厳格化以外基準法があまり改正されていないということです。以前、藤木良明さんという方の「マンションにいつまで住めるか?」 という本を読みました。この本の中にこんなくだりがあります。


平成7(1995)年1月17日未明に発生した阪神淡路大震災は、死者6433人、全壊・半壊家屋24万9180等の大きな被害をもたらした。ただし、マンションでの死者はわずかに20数人、住居としての再使用が容易でない大破を受けたもの83棟であった。このことはマンションが木造の既存住宅に比較してきわめて安全な建物であることを示している。


逆を言えば、亡くなられた方のほとんどは木造住宅において被害に遭われたということです。
私の会社も長いこと木造住宅を作らせていただいてまいりました。建築基準法に則ってその時代、その時代で仕事をさせていただいてきました。お陰さまで本当に幸運なことに地震の影響で建物に影響があったということはいままで経験したことはありません。

しかし、この数年で起こった新潟などの大地震でもやはり木造の建物が主に被害に遭ったようでした。実は先日新潟方面へ出張へ行ったのですが、まだ地震の影響を受けた建物の建替えが続いていました。その多くは元々木造であったと聞きました。

何度か建築基準法で定める耐震基準は木造のそれも高められていまして、「新耐震」と言われる昭和56年の大改正以降に建てられた建物はいくつかの大地震においてもほとんど被害にあっていないと聞いています。

少し筆が走りすぎましたが、古い木造住宅について「既存不適格」という昔の基準のまま放置されてしまっている木造等の問題について、今回全く先送りされてしまってわけではありません。住宅情報提供協会のホームページから少し拾わせていただきます。

災害・事故等の切迫性の高まり
 平成15年7月26日の宮城県北部を震源とする地震により、古い木造建築物を中心に、1,000棟以上の建築物が全壊した。また、6,400名余の死者が発生した阪神・淡路大震災においては、大破以上の被害を受けた建築物のうち94%が現行の耐震基準を満たさない建築物であったなど、昭和56年以前に建築された建築物について被害が顕著に見られた。

具体的な施策としては、以下の3つがあげられています。

既存不適格建築物に対する勧告・是正命令制度の創設(法第10条第1項及び第2項)

建築物に係る報告・検査制度の充実及び強化

既存不適格建築物に関する規制の合理化

特に木造住宅に関しては、基礎に増し打ちをするなど一定の補強をした場合の小規模増改築が認められるなどの改正があったようです。

一番の問題は「既存不適格」の問題です。昭和40年代に建築基準法が定められた時に、法律は施行以前に遡及して適用されないのが原則とされました。その時点で建っていた建物には適用されませんでした。日本の木造については、当時、寿命が20年以下とも言われていましたのでそう遠くない将来にすべて建て替わるだろうと思われていました。しかし、住宅情報提供協会さんのホームページにもありますように、まだ1000万戸以上が不適格のまま置かれているというのが現状のようです。

建築屋の社長としては、「ですから、お客様耐震診断を!」とつなげたいところですが、もう少し広く、「資産としての住宅、建物が満たすべき基準は本当はなんなのだろうか?」と問題提起させていただき、一旦ピリオドを打たせていただきます。

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橋梁の崩壊って?

まだ専門の方の結論が出ていないので、早計ではありますが、自分の勉強として、ミネソタの橋梁崩壊事故のことについて調べて書いてみようと思います。

最初にTBSのニュースをネットでみました。

米で高速道の橋崩落、50台以上転落 @ News i - TBS

画像で見る限り、折れ曲がっている鉄骨は、いくらトラス構造とは言え日本の標準から言えば相当に細ものであるように感じました。地震の係数は日米でかなり違うのでなんともいえないことではあります。相当に金属疲労が進んで今回の事故を招いてしまったのではないかというのが第一印象でした。また、その後の当局の発表でも、金属疲労について触れているものがありました。

米崩落橋 欠陥認識も放置、金属疲労も計算に入れず  @ Sankei WEB

金属疲労によりトラス構造と思われる橋の構造体の一部が必要な強度を失い、なんらかの力が加わると力の集まる結節点などがばらばらになりやすくなっていた可能性があります。

力と形 トラス構造 @ つまようじ ブリッジコンテスト 

気になるのは、TBSのニュースで伝えられたインタビューです。

運転していたら橋が揺れだした。そしたら橋が崩れて総ての車が落ちたんだ。ぼくも落ちかけたけど水に飛び込んで助かったんだ。

Brdidge070805

崩壊する前に自動車を運転していてもわかるほどの大きなゆれがあり、車を降りて水に飛び込むくらいの時間があったということです。

調査用のビデオが記録した今回の橋の崩壊がYouTubeで公開されています。この直前の映像が見たいところですが、見つかりませんでした。

この映像に移っている部分では、橋が水平を保ったまま落ちていることは注目に値します。この手前に崩壊しなかった橋脚があり、そのまた手前の橋が落ちています。つまり、橋脚が全面的に一度に崩壊したのではなく、橋脚と橋脚の間に一度に垂直な力が働き橋が崩壊した可能性があります。

なぜ橋がゆれることがポイントかについて「ビルはなぜ建っているかなぜ壊れるか」という本から引用させていただきます。

いま一本の丸太の橋があるとします。その中央に少年が乗りましたが、少年は軽いため橋は壊れません。しかし、少年がリズムをとりながら、橋の上で上下運動をすると、初めは確かにびくともしなかった橋が、徐々に揺れ始め、最後には橋が壊れてしまうくらいまで大揺れを起こします。この現象を共振resonannceといっています。

(中略)

そして(少年が加えた)外力の上下運動の周期と、橋が持っている固有の周期とが一致したときに共振が起こるのです。

これらのことを考えると、1939年に建設されわずか4ヶ月で崩れてしまったタコマ橋について「SYNC」で読んだのを思い出しました。

これは本当に推測に過ぎないのですが、今回は橋が老朽化し金属疲労により崩れやすくなっていたことに加え、道路の表層の工事のために道路がでこぼこしていて、通常以上の「上下運動」が加わり共振が起こったとは考えられないでしょうか?

非常に不十分な推察であり、橋梁について私自身は全くの素人であることの断りを加えて一旦この記事をおきます。また新しい事実などが明らかになったときに書き加えます。

いずれにせよ橋のような国民の生活と経済を支える重要なインフラストラクチャーが米国ばかりではなく日本においても老朽化し、再投資の時期が来ていることを、十分に認識しなければならないと信じます。創業と守勢はいずれも「難し(かたし)」なのです。

インフラストラクチャーのメンテナンスの担い手がどうしても必要なのです、と建築屋の同胞へエールを送ります。

■追記

仮想地球通信: 米ミネソタ州の橋崩落事故」というブログで、事故現場の以前の写真が検索できることを知りました。

Minnesota0708063d_2

Microsoft Livesearch

やはり、あくまで私の個人的な感覚ですが日本の感覚から行くと落ちた橋のトラス構造は少し細すぎるようには見えます。

最も近いアングルの事故後の写真です。

070801_bridge_collapse3

Minn. officials warned about bridge as early as 1990 @ KOMOTV.COM

やはり橋脚が残っているのが不思議に感じます。共振の可能性を示唆しているのではないでしょうか?

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