橋梁の崩壊って?
まだ専門の方の結論が出ていないので、早計ではありますが、自分の勉強として、ミネソタの橋梁崩壊事故のことについて調べて書いてみようと思います。
最初にTBSのニュースをネットでみました。
・米で高速道の橋崩落、50台以上転落 @ News i - TBS
画像で見る限り、折れ曲がっている鉄骨は、いくらトラス構造とは言え日本の標準から言えば相当に細ものであるように感じました。地震の係数は日米でかなり違うのでなんともいえないことではあります。相当に金属疲労が進んで今回の事故を招いてしまったのではないかというのが第一印象でした。また、その後の当局の発表でも、金属疲労について触れているものがありました。
・米崩落橋 欠陥認識も放置、金属疲労も計算に入れず @ Sankei WEB
金属疲労によりトラス構造と思われる橋の構造体の一部が必要な強度を失い、なんらかの力が加わると力の集まる結節点などがばらばらになりやすくなっていた可能性があります。
・力と形 トラス構造 @ つまようじ ブリッジコンテスト
気になるのは、TBSのニュースで伝えられたインタビューです。
運転していたら橋が揺れだした。そしたら橋が崩れて総ての車が落ちたんだ。ぼくも落ちかけたけど水に飛び込んで助かったんだ。
崩壊する前に自動車を運転していてもわかるほどの大きなゆれがあり、車を降りて水に飛び込むくらいの時間があったということです。
調査用のビデオが記録した今回の橋の崩壊がYouTubeで公開されています。この直前の映像が見たいところですが、見つかりませんでした。
この映像に移っている部分では、橋が水平を保ったまま落ちていることは注目に値します。この手前に崩壊しなかった橋脚があり、そのまた手前の橋が落ちています。つまり、橋脚が全面的に一度に崩壊したのではなく、橋脚と橋脚の間に一度に垂直な力が働き橋が崩壊した可能性があります。
なぜ橋がゆれることがポイントかについて「ビルはなぜ建っているかなぜ壊れるか」という本から引用させていただきます。
いま一本の丸太の橋があるとします。その中央に少年が乗りましたが、少年は軽いため橋は壊れません。しかし、少年がリズムをとりながら、橋の上で上下運動をすると、初めは確かにびくともしなかった橋が、徐々に揺れ始め、最後には橋が壊れてしまうくらいまで大揺れを起こします。この現象を共振resonannceといっています。
(中略)
そして(少年が加えた)外力の上下運動の周期と、橋が持っている固有の周期とが一致したときに共振が起こるのです。
これらのことを考えると、1939年に建設されわずか4ヶ月で崩れてしまったタコマ橋について「SYNC」で読んだのを思い出しました。
これは本当に推測に過ぎないのですが、今回は橋が老朽化し金属疲労により崩れやすくなっていたことに加え、道路の表層の工事のために道路がでこぼこしていて、通常以上の「上下運動」が加わり共振が起こったとは考えられないでしょうか?
非常に不十分な推察であり、橋梁について私自身は全くの素人であることの断りを加えて一旦この記事をおきます。また新しい事実などが明らかになったときに書き加えます。
いずれにせよ橋のような国民の生活と経済を支える重要なインフラストラクチャーが米国ばかりではなく日本においても老朽化し、再投資の時期が来ていることを、十分に認識しなければならないと信じます。創業と守勢はいずれも「難し(かたし)」なのです。
インフラストラクチャーのメンテナンスの担い手がどうしても必要なのです、と建築屋の同胞へエールを送ります。
■追記
「仮想地球通信: 米ミネソタ州の橋崩落事故」というブログで、事故現場の以前の写真が検索できることを知りました。
やはり、あくまで私の個人的な感覚ですが日本の感覚から行くと落ちた橋のトラス構造は少し細すぎるようには見えます。
最も近いアングルの事故後の写真です。
・Minn. officials warned about bridge as early as 1990 @ KOMOTV.COM
やはり橋脚が残っているのが不思議に感じます。共振の可能性を示唆しているのではないでしょうか?
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