事務所ビルの基準階レンタブル比って?
必要に迫られて事務所ビルのプランをいろいろ考えています。鉄筋コンクリートの建物は大空間が取れると言われています。大スパンを飛ばすために鉄骨鉄筋コンクリート構造や、プレテンション・鉄筋コンクリートなどさまざまな工法が開発されてきました。しかし、ごく普通の鉄筋コンクリートでごく普通のスパンで構造を考えることが一番コスト的に経済で、構造的にも無理がないのです。これを経済スパンといいます。普通の鉄筋コンクリート・ラーメン構造では、6mから8mのスパンで柱をとるのがよいとされています。事務所のプランニングなどでは、この間の7mでスパンをとると7×7=49㎡となり、プランニング上も都合がよいわけです。これを経済グリッドとか、基本グリッドと呼びます。
肝心のレンタブル比の話に行く前に、もうすこし予習が必要です。3、4階以上の建物を計画するときに、各階にどうしても必要な施設や設備があります。たとえば、4階以上の建物には避難できる階まで通じる階段が2つ以上必要だという法律があります(参照:建築基準法施行令第121条)。あるいは、4階以上だとエレベーターが通っているのも当たり前ですよね。トイレも当然必要です。こういったものをまとめて「コア」と呼んでいます。
さてやっとレンタブル比です。貸事務所ビルを考えてみましょう。貸事務所ビルを建てる事業者は、テナントから面積に応じた賃料をもらうことによって収益をかせぐわけです。月坪1万5千円とか、高いところだと月坪3万円とか5万円とかいうところもあるようです。そこで、その貸事務所ビルがどれくらい収益性がいいかをその階の面積で、事務所部分の面積を割った比で収益性をあらわします。これが「貸出可能面積比率」という意味で、「レンタブル比」と呼ばれます。
事務所ビルのそれぞれの階はほとんど同じ形をしています。また、事務所部分以外といえばコアしかありません。したがって、レンタブル比とはいかにコアの面積を小さくして、事務所を大きくとるかにかかっていると言っていいでしょう。ところが、あまり事務所が大きくなりすぎると火事などの災害があったときに逃げるのが大変難しくなります。このため、先ほどの建築基準法施行令121条の直前の120条に直通の階段までの最大の距離が定められています。通常の場合、40mから50m程度となります。また、せっかく121条で2つの階段を設置しても、隣合わせであっては意味がありません。このためそれぞれの階段にいたる距離の重複距離の最大限も決められています。また、いくら照明がふつうに使われているとはいえ、あまり窓から遠いのも考え物です。これらの要素を考え併せて、通常事務所は最大でも奥行き20m程度、長さも40m程度をひとつのユニットにするケースが多いようです。だいたい200坪から300坪くらいでしょうか。
さて、この図ではレンタブル比はいくつになるでしょうか?予備線をわざと残しているのですが、縦横7mとしてください。さきほどの基本グリッドです。
これでいくと事務所部分が縦3マス、21mと、横4マス28mとなります。したがって21×28=588㎡となります。あるいは、単に4×3=12マスと数えてもよいでしょう。そうすると、全体は4×4=16マスとなります。12マス÷16マス=75%ですね。この場合はレンタブル比が75%ということになります。
コアと事務所の横幅が同じなら、縦の長さでレンタブル比が決まることもこの図からわかりますね。事務所部分の3マスを全体の縦の長さ4マスでわっても、75%のレンタブル比になることがわかります。
いろいろやってみるとわかるのですが、現行の法律でいくと階段やエレベーター、トイレなどをとるとどうしてもコアは200㎡、4コマ程度必要になります。先ほど申し上げたように、事務所の奥行なども制限をうけますので、縦の長さで3マス21mあるいは4マス28m程度が限界ではないでしょうか?これは大規模な事務所ビルではレンタブル比があがらなくてこまってしまいます。そこで、中コアという形態をとることが中規模以上の貸事務所ビルでは多いようです。
この場合のレンブル比は縦7マスのうち6マスまでが事務所部分となりますので、6マス÷7マス=85.7%となります。だいたい事務所ビルでは85%程度が限界ではないでしょうか?
このほか、最小限のコアとするために、階段のひとつを外階段にしてしまうなどの方法もあります。また、コアの廊下をうまくとって事務所部分を分割するためのテクニックなどもあります。それはまた別の機会に説明させていただきます。
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